※ 前提となる基礎情報「基礎票の数え方」についての参考記事は、本記事の下部にリンクがあります。合わせてご覧ください。
- 【筆者について】
- 山辺美嗣、もしくは山辺美嗣の情報をもとに夫婦で執筆しています。
【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、その後県議会議員に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対としても活動した経験を基に執筆しています。現在、政治行政のコンサルタント。【やまべちかこ(山辺千賀子)】
元人材育成コンサルタント。ニュースキャスターや番組ナレーター(恩師|お茶の水博士・ベルクカッツェ)、女性組織創設運営などの活動を地方で行ってきました。議員の妻としての立場、認知症や身障等の家族(計5人)との暮らしなどで経験したノウハウもお伝えしています。夫の議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫4人。
地方議員の中心は、市区町村議会議員です
全国3万2千人の地方議員の中心を占めるのは、市区町村議会議員の皆さんですので、市区町村の選挙を中心に分析していきましょう。
地方議員の人数:2022年3月
市区議会議員 18900
町村議会議員 10900
都道府県議会議員 2600
合計 32400
市区町村議会議員の選挙は、都道府県議会議員の選挙と比較して、選挙の性質が大きく違いますが、その理由について先ず見ていきましょう。
わずかの差で当落を争う激戦区が多い
市区町村議会議員選挙の特色は、激戦であることですが、その理由はつぎの3点です。立地条件や投票率に関係なく全国の殆んどの市区町村で激戦となっています。
- 定数が大きいので、毎回新人が当選するチャンスがある。
市区町村議会議員選挙は市区町村が一つの大選挙区で、定数が数10人と大きいことが特色。そのため、議員の年齢も幅広く分布しており一定の割合で世代交代が生じるので、新人が挑戦してくる。(一方、都道府県議会議員選挙は中選挙区であり、定数が1人とか2人の選挙区も多い。) - 当選ラインが高くないので、立候補者が多くなる。
数100票から2000票までと手の届く票数のため、多くの新人、元職も挑戦して激戦になる。 - 地区ごとの競争になり、加熱する。
議席を失うと陳情など地区(学校区や集落、町内)要望の世話人を喪失して、地区に不利益があるため。
当選ラインが設定できて、はじめて選挙戦略が始まる
選挙の方程式
【 第1の方程式 】
当選ライン = 基礎票 x 倍数
【 第2の方程式 】
当選ライン = 活動期間 x 陣営人数
これは私が実際に経験して感じてきた選挙の法則を「方程式」としてあらわしたものです。
この方程式の意味は次のように理解してください。
- 基礎票はどれだけあるか
- 何倍にすると当選ラインに届くか
- 活動期間はどれくらいあるか
- 何人の陣営で活動を行い、当選ラインを達成するか
では、実例をもとに当選ラインを研究していきましょう。
当選ラインの実例
当選ラインは、直近の選挙の当選者・落選者の票数と、過去との投票率の比較、そして、前回・前々回の最下位当選者の票数も見て判断します。
人口規模ごとに実例を見て、選挙の特徴を研究していきましょう。
<その1>人口40万人の中核市 (例)千葉県柏市
投票日 | 投票率 | 定数/候補者数 |
2019/08/04 | 34.22 | 36/48 |
当選順位 | 得票数 | 新/現/元 |
トップ | 5610 | 新 |
ラス前 | 1765 | 新 |
最下位 | 1666 | 元 |
次点落選 | 1637 | 新 |
落 選 | 1635 | 現 |
落 選 | 1572 | 現 |
選挙の特徴
- 立候補者12人超の激戦で、新人7人と元職1人が当選し、現職3人は落選
- 最下位当選より下の4人が100票以内の僅差、最下位当選と次点の票差は29票
- 当選ラインは2000票(今回選挙の最下位当選は1666、前回は1969、前々回は1952)
人口同規模の他の市では、当選ライン2500票の例もある(投票率が47.96と高めの富山市の例)
<その2>人口16万人の中規模市 (例)愛媛県今治市
投票日 | 投票率 | 定数/候補者数 |
2021/01/31 | 61.15 | 30/39 |
当選順位 | 得票数 | 新/現/元 |
トップ | 4064 | 現 |
ラス前 | 1844 | 現 |
最下位 | 1798 | 現 |
次点落選 | 1741 | 現 |
落 選 | 1723 | 新 |
落 選 | 1705 | 現 |
選挙の特徴
- 立候補者9人超の激戦で、新人2人と元職2人が当選、現職4人は落選
- 最下位当選から下位4人は100票以内の僅差。最下位と次点との票差は57票
- 当選ライン1800票(今回選挙の最下位当選1798、前回は1644、前々回は1577)今回、定数が32から30に削減
<その3>人口6万人の小規模市 (例)茨城県常総市
投票日 | 投票率 | 定数/候補者数 |
2019/04/21 | 60.40 | 22/28 |
当選順位 | 得票数 | 新/現/元 |
トップ | 2004 | 元 |
ラス前 | 821 | 現 |
最下位 | 774 | 新 |
次点落選 | 695 | 新 |
落 選 | 537 | 現 |
落 選 | 520 | 現 |
選挙の特徴
- 立候補者8人超の激戦で、新人7人と元職1人が当選、現職3人は落選
- 最下位と次点の票差は79票
- 当選ライン1000票 (今回選挙の最下位当選は774、前回は無投票、前々回は960)
<その4>人口2万人の町 (例)山形県高畠町
投票日 | 投票率 | 定数/候補者数 |
2019/07/30 | 63.63 | 15/20 |
当選順位 | 得票数 | 新/現/元 |
トップ | 941 | 現 |
ラス前 | 547 | 現 |
最下位 | 518 | 現 |
次点落選 | 476 | 現 |
落 選 | 437 | 新 |
落 選 | 422 | 元 |
選挙の特徴
- 立候補者5人超の激戦。新人2人と元職1人当選、現職2人は落選
- 最下当選と次点との票差は42票
- 当選ライン500票(今回選挙の最下位得票518、前回は477、前々回は338)今回、定数が17から15に削減
勝敗の分け目
4つの例で当選ラインを見てきました。それぞれの選挙はいずれも激戦であり、開票の確定は午前零時を過ぎたので、候補者も陣営もさぞかしハラハラ、ドキドキしたことと思います。
前段で示した「選挙の方程式」を思い出していただき、「勝敗の分け目」は何であったのかお話ししたいと思います。
当選ラインの大台にのせることができたか?
第1の方程式 : 当選ライン = 基礎票 × 倍数
候補者は何票の基礎票を持っており、何倍にすれば当選ラインの大台にのることができるか。これが戦略の基本です。
基礎票は、候補者の血縁と地縁の人脈が中心であり、ビジネスの人脈はそんなに期待できるものではありませんが、このあたりの戦略は別途、記事にしていますので参照してください。
僅差を制する戦術が実行できたか?
第2の方程式 : 当選ライン = 活動期間 × 陣営人数
選挙は基本的に「農耕型」であるといわれます。つまり「種をまき水をやり、時間をかけて育て、最後に収穫する」
選挙前の政治活動期間に、人手をかけて徹底的などぶ板で、まんべんなく種をまき、時間をかけて支援者を増やす。
選挙に入っての収穫は、陣営の総動員できめ細かに個人演説会の会場設定や、支援者への個々面接で票を確実にする。
激戦の僅差を制するのは、こうした戦術の実行にかかっているといえるでしょう。こうした戦術については別の記事で詳細に書いていますので、合わせて参照してください。
前提となる基礎情報「基礎票の数え方」のリンク先
合わせてご覧いただく事で、戦略が立てやすくなります。
\クリックしてご覧ください/
[adcode] この記事を読むとわかること 自分の当選見込み判断に必要な「基礎票」とは何か 地方議員としての「基礎票」が自分には何票あるのか、種類と数え方 地方議員選挙で、あてにすると危[…]