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【地方議員の年金は現在どうなっている?】議員年金が廃止された経緯と厚生年金加入をめぐる課題


「落選したら、ただの人」

地方議員の立場を表す言葉として、しばしば使われます。

地方議員には任期があり、選挙で当選しなければ議員を続けることはできません。会社員のような雇用保障があるわけではなく、原則として退職金もありません。

さらに現在は、地方議員だけを対象とする独自の「議員年金制度」もありません。

この記事では、地方議員の年金の現状、旧議員年金制度が廃止された経緯、厚生年金加入をめぐる議論について、わかりやすく解説します。

 

筆者/山辺美嗣(やまべみつぐ)について
公共政策コンサルタント


◆山辺の3つの視点◆
①国の行政視点:経済産業省(旧通産省)で培った視点
②国際機関の視点:国連勤務経験を生かした視点
③地方の視点:県議会議員時代の現場重視の視点


山辺は県議時代の2000年に、「地産地消政策」を、全国初で実現した。

地方議員には現在、独自の議員年金制度がない

現在、地方議員という立場だけを理由に加入できる、公的な議員年金制度はありません。

地方議員も一般の国民と同じように、働き方や勤務先などに応じて、国民年金または厚生年金に加入します。

国民年金に加入する地方議員

議員以外に厚生年金の加入対象となる勤務先がない場合、20歳以上60歳未満の地方議員は、原則として国民年金の第1号被保険者になります。

国民年金から支給される老齢基礎年金だけでは、老後の生活資金として十分でないと感じる人もいるでしょう。

そのため、必要に応じて次のような制度を利用する方法があります。

・国民年金基金
・付加年金
・個人型確定拠出年金(iDeCo)
・民間の個人年金保険
・預貯金や資産運用

加入条件や税制上の取り扱いは制度ごとに異なるため、年金事務所や専門家に確認することが大切です。

厚生年金に加入している地方議員

地方議員であっても、会社などの厚生年金適用事業所で勤務し、加入要件を満たしている場合は、厚生年金に加入することがあります。

会社役員として実際に経営や業務に携わり、役員報酬を受けている場合にも、厚生年金の対象となることがあります。

ただし、会社に名前だけを置けば加入できるわけではありません。勤務実態や報酬の支払いなどから、実質的な使用関係が認められる必要があります。

また、自営業者やフリーランスとして働いているだけでは、通常は厚生年金には加入せず、国民年金の対象となります。

地方議員年金はなぜ廃止されたのか

地方議会議員の年金制度は、2011年6月1日に廃止されました。

旧制度は、地方公務員等共済組合法に基づく制度で、都道府県議会議員、市議会議員、町村議会議員が原則として加入していました。

一定の掛金を負担し、原則として12年以上の議員在職期間がある場合に、退職後、退職年金を受け取る仕組みでした。

市町村合併や議員定数削減で財政が悪化

制度廃止の大きな要因となったのが、加入する地方議員数の減少です。

平成の市町村合併によって市町村数が減少し、それに伴って地方議員の人数も大幅に減りました。

さらに、行政改革による議員定数や議員報酬の削減なども重なり、現役議員からの掛金収入が減少しました。一方では年金受給者が増え、制度の財政状況が厳しくなっていきました。

こうした状況に加え、地方議員だけを対象とした制度を維持することについて、国民の理解を得ることが難しくなったこともあり、制度の存続は困難と判断されました。

その結果、地方公務員等共済組合法の改正法が成立し、2011年6月1日に制度が廃止されました。

 

制度廃止前に議員だった人の年金はどうなったのか

議員年金制度が廃止されたからといって、それまでの加入期間に関する権利がすべて消滅したわけではありません。

制度廃止前の在職期間、退職した時期、受給資格の有無などに応じて、経過措置が設けられています。

例えば、2011年5月までの議員在職期間が原則として12年以上ある人は、一定の条件のもとで退職年金を受けることができます。退職一時金を選択できる場合もあります。

一方、在職期間が12年未満だった人についても、一定の要件に応じて退職一時金などの対象となる場合があります。

制度廃止後の給付は個々の経歴によって異なるため、該当する人は、都道府県議会議員共済会、市議会議員共済会または町村議会議員共済会に確認する必要があります。

地方議員の厚生年金加入を求める議論

旧議員年金制度の復活とは別に、地方議員を厚生年金に加入できるようにすることを求める動きがあります。

全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会の地方議会三団体は、地方議員の厚生年金加入について、政府や政党に要望を続けています。

しかし、2026年7月現在、地方議員が議員という立場だけで厚生年金に加入する制度は実現していません。

議員のなり手不足への対策になるという意見

厚生年金加入を求める側からは、年金や退職後の生活保障が不十分なことが、地方議員のなり手不足につながっているとの意見があります。

特に、会社員が立候補のために退職すると、厚生年金から国民年金へ移ることがあります。

落選すれば収入を失い、以前の勤務先に戻れる保証もありません。こうした経済的な不安から、若い世代や会社員、子育て中の人などが立候補をためらう可能性があるという指摘です。

公費負担への理解が得られるか

厚生年金の保険料は、原則として本人と事業主が折半して負担します。

地方議員を厚生年金に加入させる場合、事業主負担に相当する保険料を誰が負担するのかが問題になります。

自治体が負担すれば、最終的には公費から支出されます。そのため、住民や納税者の理解をどのように得るかが重要な論点になります。

地方議員だけを特別に扱うことへの批判

地方議員の生活保障を充実させる必要性がある一方で、

「国民年金だけで生活する自営業者やフリーランスもいる」
「地方議員だけを厚生年金に加入させるのは公平なのか」
「まず国民年金全体の給付水準を議論すべきではないか」

といった反対意見もあります。

地方議員の厚生年金加入は、単に議員を優遇するかどうかという問題ではありません。

幅広い人が地方議員に立候補できる環境を整えることと、公費負担に対する住民の理解を、どのように両立させるかが問われています。

 

会社を辞めて立候補する人は年金の切り替えを確認する

会社員が退職すると、原則として勤務先の厚生年金の資格を失います。

退職後、すぐに別の会社で厚生年金に加入しない場合は、国民年金への切り替え手続きが必要です。

立候補の準備中は、選挙関係の手続きや挨拶回りなどに追われます。そのため、健康保険や年金の切り替えを忘れてしまう可能性があります。

会社を退職して地方議員を目指す人は、次の点を早めに確認しておきましょう。

・厚生年金の資格喪失日
・国民年金への切り替え
・健康保険の切り替え
・保険料の免除や猶予制度
・国民年金基金やiDeCoの利用条件

手続きについて不明な点がある場合は、住所地の市区町村窓口や年金事務所に相談してください。

地方議員の年金問題は、議会の将来にも関わる

地方議員には、選挙によって職を失う可能性があります。

退職金も原則としてなく、地方議員独自の年金制度もありません。議員報酬が比較的低い自治体では、将来への不安が立候補の障壁になることも考えられます。

一方で、地方議員の厚生年金保険料を公費で負担することには、住民の理解が必要です。

地方議員の年金問題は、議員個人の老後だけの問題ではありません。

どのような人が地方政治に参加できるのか、地方議会の担い手をどのように確保するのかという、地域の民主主義に関わる課題として考える必要があります。

 


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【①地方議員向けに特化した情報】
既存の議員関連情報(マスコミ報道や選挙マニュアル等)は国会議員を想定したものが中心です。地方議員の実情に合った情報をお探しの方におすすめです。

【②議員当事者ならではのノウハウや実情が豊富】
連続6回当選の元県議会議長が、勝ち抜いてきたノウハウを公開しています。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対として培ったノウハウもご紹介します。

【③ 地方議員と支援者への応援情報】
官僚・国連勤務・県議経験者の筆者が、地方議員からは見えにくい「国会議員と地方議員の違い」「他国と日本の違い」をふまえて解説しています。選挙法規等は議員目線で読み解いています。議員活動を支えた妻も、人材育成業の経験を活かし、わかりやすい情報を目指して執筆に加わっています。