派閥の存在意義が問われています。
自民党の裏金問題では派閥に批判が集中しています。この記事では派閥について、次の3つの観点から説明します。
記事内容
- 派閥とは何か
- 派閥の何が問題なのか
- 派閥に存在意義はあるのか
- 【筆者/やまべみつぐ】について
- 【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。
目次はクリックしてご覧下さい。
派閥とは何か
「派閥」とは、人と人が集まった集団に見られる「仲間組織」のことを指します。
- 「派閥」詳しくはクリックして下さい
- 【派閥の定義】
一般に、利益などを中心にして結びついた「仲間」を意味する。
この「仲間」には次の傾向があり、とくに政治的集団では顕著となる。①公式集団のなかの非公式集団で閉鎖的
②権力が重要視され、他集団と対立し争ったりする
③集団内部のメンバーには恩恵が与えられる
「政治派閥」は日本の自民党だけ
そもそも日本以外の民主国家の政治には「政党」はあっても、日本でいうところの「派閥」は存在していません。
民主国家の政党内においては、リーダーの選出、政策の決定などに際して、個々の議員が意見を同じくする「グループ」として行動することはあっても、グループが長期に維持されて「派閥」になることはありません。
政治の派閥は、1955年以降の日本で、自民党一強の下で発生した独特のものと言えるでしょう。
他の民主国家では1つの党が長期にわたり政権を維持することはありません。
民意を反映して政権交代が頻繁に起きることで民主主義が機能しています。
したがって、日本以外の民主国家は、2大政党政治あるいは政党連立政治をおこなっているのです。
日本は民主主義なのか
2大政党ではない日本は、民主主義が危ういということですか
かつては、自民党内の「派閥」が、疑似政党として、政権交代の役割を担っていましたが、現在は、民主主義が危ういと言えるかもしれません。
日本では、1955年から1994年まで40年に亘り自民党が政権を握り続け、自民一強と呼ばれる政治が続きました。
この時代の自民党一強政治とは、「派閥という疑似政党が連立して1党のようにふるまう」連合政治であったと言われます。
派閥によって「疑似的な」政権交代が起きて民主的な政治であるかのように見えたため、国民の支持が長く続いたのです。
自民党一強時代が終わったとされる今、派閥の存在意義が問われています。
次は、ではなぜ今も「派閥」は生き残ってきたのか、探ります。
派閥の何が問題なのか
非公式なグループが長期に継続すると弊害が出てきます。
固定化された縦型社会においては、幹部の権限が絶大となっていくためです。
派閥幹部の絶大な権限
派閥の幹部の権限は絶大で、金とポストを、所属議員に与える側に立つことができる
自民一強時代に、派閥は金とポストを獲得する機能を高めてきました。
自民党総裁選挙は、公職選挙法が適用されない「何でもあり」「ルール無し」のバトルです。各派閥が行う党員や議員に対する多数派工作には、お金が飛び交うことになったと言われています。
こうして派閥は、お金がものを言う集団としての傾向が強くなり、所属議員には「お盆には氷代、暮れにはモチ代」が配られてたとも言われています。また、派閥間でポストを取りあい、所属議員にそれを配分する仕組みも次第に形成されたのでしょう。
今でも金とポストを握っている派閥の幹部に気に入られなければ、政治家としての志を果たすことができない構図となっていることは容易に推測できます。
派閥の現状は、前近代的な「親分子分」の構造であり、党員も他の国民も蚊帳の外に置かれている⁉
これが実態であるなら、もはや自民党の政治史の中でも汚点というべき状況ではないでしょうか。
国会議員の「候補者選考」は、派閥が主導して行われている
自民党の国会議員候補者選考では「現職優先」ルールがあり、派閥幹部の推す現職がほぼ無条件で候補者になります。
世襲議員が生まれる土壌もここにあり、派閥が固定化して継続する原因となっていると考えられます。
このような選考は他の民主国家の政党には無い、日本の自民党独自のものです。
他の民主国家では、政党の幹部が、選挙区の候補者を決めることはありません。
国会議員の候補者を立てる時は、地元選挙区で党員が推す声が最重視されます。現職であれ新人であれ、地元で評価を得ないと候補者として選ばれません。
地元選挙区から選ばれる候補者であれば、その候補者の人格、識見、経歴や能力など、政治家としての資質が党員の目で審査されると言えます。
知名度だけで、政党本部が決めたタレントが、候補者になることなどありえないのです。
派閥に存在意義はあるのか
結論として、現在の派閥に存在意義は無いと言えます。
なぜ現状の派閥に存在意義が無いと言えるのですか
かつて中選挙区制のもとでは、野党が弱く、自民党の一人勝ちでした。
しかし民主主義には、「競争」により民意を反映する政権が生まれることが大切です。
そこで「派閥」間で競争することに意義があったのです。
小選挙区制になり派閥の意義は壊滅したと言える
小選挙区制に変わってからは、選挙区の候補者は政党が選んだ1人に絞られることとなり、「派閥」で選んだ候補者同士が争う必要がなくなりました。
表向きは、派閥間で競争する必要がなくなったのです。
そのため、派閥は、逆に、水面下での競争を激化させたともいえるでしょう。
党が決定する人事やお金の配分などに対して、派閥が口を出し派閥間で争う構図になったのです。
かつて派閥に存在意義はあった
派閥には存在意義があったのか?
かつて中選挙区制時代、野党が弱かったときには、派閥に存在意義はあったと言えるでしょう。
自民一強の時代の派閥間での競争は、現在の、政党間での競争に等しかったと言えます。いやそれ以上に熾烈だったという人も多くいます。
見方を変えると、かつて野党があまりにも弱くて政権を担う能力がなかったため、自民党が派閥間で切磋琢磨し合うほかに、方法が無かったのだと言えるかもしれません。
派閥間の勢力争いで勝った派閥が、実質的に政権を担いました。
また、優秀な候補者を確保するために、派閥はよい人材を探しもとめ熱心に教育を行ったため、政治家の質が今よりは良かったともいえます。
政策集団としての派閥の問題点
派閥が政策集団になれば、存続意義があるのでは?
「非公式集団」である派閥が政策集団になるとすると、派閥ごとに政策が違ってきて政党が成り立ちません。
政策を打ち立てる以上、派閥は自立して「新しい政党」になるという明確な判断が求められると思います。
自民党副総裁が、政策集団として派閥を維持するのだと発言されています。
そもそも議会制民主主義で政策の担い手は「政党」であり、法に認められた唯一の「公式集団」です。
政党は政策を掲げて選挙に臨み、国民に政策の選択を問うという「政党政治」が、我が国おいても他の民主国家においても基本にあります。
その意味でも、派閥の解散は必然なのです。
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