議員の家庭。
地方議員を目指す本人だけでなく、家族の暮らしも一変します。
「議員の妻(夫)って何をするの?」
「家族はどれくらい関わるべき?」と不安に思う方は少なくありません。
そんな方へのヒントを、実際に地方議員の家族として、見聞きしてきたことをベースにお伝えします。
記事内容
- 地方議員の家族になると、どんな生活の変化があるか
- 「議員の妻」や「家族」として求められる役割とは?
- 見られている意識と、プライバシーとの向き合い方
- 家庭内に広がる“政治の空気”との付き合い方
- 家族としての心構えと、心が折れないためのヒント
- 筆者(やまべちかこ)についてはここをクリックして下さい。
- 【やまべちかこ】元人材育成コンサルタント。議員の妻の立場で経験した暮らしのノウハウ等もお伝えしています。
【仕事の経歴】人材育成コンサルタント(対象:官庁、都道府県などの職員、民間企業、医療・福祉従事者など)・産業カウンセラー・ローカル局ニュースキャスター・ナレーター(恩師|お茶の水博士・ベルクカッツェ)・女性組織創設運営。
【暮らしの経歴】認知症や身障等の家族(計5人)との暮らし・生家倒産・議員の後添え・本家長男の嫁・夫の議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。
地方議員の家族になると、生活はどう変わる?
地方議員になると、本人はもちろん、家族の生活もがらりと変わります。
いちばんの違いは、「公私の境目がなくなる」ことかもしれません。
電話や来客は平日も休日も関係なく、地域のイベントや要望が日常に入り込むようになります。
自然と、家族も議員の一部のように振る舞うことが求められる場面が増えていきます。
仕事とプライベートのオンオフがあいまいになる状態は、地方議員の家庭ならではでしょう。
議会会期中:仕事
議会会期の前後:準備や調査
早朝:地域行事に参加・来客対応
夜間:地域の行事や会合に参加・個別の相談に応じる
土日祝日:地域内外の行事や会合に参加・個別の相談に応じる
これは、地元に暮らす地方議員ならではの特徴です。
国会議員のように地元と東京を行き来する生活ではなく、24時間365日、選挙区に“暮らしている”からこその密接さがあるのです。
「議員の家族も見られている」という現実
議員本人だけでなく、家族もまた「議員の家族としてのふるまい」を見られる立場になります。
たとえば——
地域の行事でのふるまいや服装
買い物中に交わすちょっとした会話
SNSでの投稿内容や言葉づかい
ふだん通りの生活をしているだけでも、「あの人は議員の奥さん(旦那さん)」と意識されるようになります。
過度に気にしすぎる必要はありませんが、ふだんの自分らしさと社会的な目線のちょうどよいバランスを見つけることはとても大切です。
家の中にも政治の空気が入ってくる
選挙準備や地域の相談ごとなど、政治に関する話題が、家の中の空気にも自然と入り込んでくるようになります。
「次の行事で何が必要なのか」
「地元で何が問題になっているのか」
リビングやダイニングが、ちょっとした“議員控室”のようになることもあります。
内部資料や連絡メモが積まれている風景が、日常になっていくのです。
そんな環境で大切になるのは、「守秘義務を守ること」と「家庭に政治じゃない時間を残すこと」。
ときには、意識的に「関係のない話題」で家族みんなが心をほどいていられる時間をつくることも大切です。
家族として、議員活動にどう関わるか
議員の家族だからといって、全面的に応援団にならなければいけないわけではありません。
一昔前は、夫が議員の場合、妻が裏方に回って地域活動に参加するというスタイルは主流でした。
選挙で選ばれたのはあくまで議員本人なのですが、妻も、地域に貢献するものだという慣習が続いていたようです。
例
福祉施設に妻が慰問に行く
妻が、地域行事の世話役になる
地域住民の悩みを聞く
議員の妻同士で情報交換をする
かなりの負担といえば負担です。
実際、心を病む人もいたようです。
最近は、その反動もあるのでしょう。
妻は、仕事を持ち続け「仕事があるから」という立場で、夫の活動にほとんど関与しない立場の人も増えました。
とはいえ、「私は関係ない」と完全に距離を置くのも、気まずさのもとになります。
大切なのは、「ほどよく、納得いくかたちで支える」ことといえそうです。
このあたりのバランスのとり方は、まさに今、試行錯誤が続いています。
議員の家族としてどの程度関わるのかを左右する要因
家族の立場は、地域性などによって、大きく変わりますので少しご説明しておきましょう。
変わる要因の代表例は、次の通りです。
当てはまる項目が多ければ多いほど、家族の協力や支えが重要になっていきます。
市町村合併をした地域(旧市町村ごとに重鎮が存在する)
定住率が高い(お互いのことを深く知っている)
伝統行事が多い(高齢化の傾向)
人口の流入が少ない
人口の流出が多い
行政の財政難(公共事業や福祉に不満を持つ人が少なくない)
上記に当てはまる項目が多い場合は、家族の協力がないと、あっという間に落選してしまうリスクが高まるかもしれません。
特に、定住率の高い地域は、匿名性が乏しくなる傾向が強く、地域住民の、親子三代にわたる家族構成や、職歴、病歴までもが、お互いに知っているところもあるようです。
そうした土地柄では、議員の家族に対して、強い期待と関心が寄せられていることは珍しくないでしょう。
地方議員の家族は、選挙区外にも理解者を
まさにその通りだと思います。
選挙区内では、どうしても人間関係に配慮が必要になります。
だからこそ、選挙区の外に「何でも話せる相手」がいることは、心の健康を守る上でもとても大切です。
私自身も、遠くに住む友人との会話に何度も助けられました。
おわりに:議員の家族のかたちは、ひとつじゃない
議員の家族になるとき、完璧な正解はありません。
ましてや今は、政治環境が大きく変わろうとしてるので、家族にとっても試行錯誤が続いています。
この記事でお伝えしたのは、あくまでも私自身が見聞きしてきたことから感じたことです。
これから地方議員を目指す方、すでに支えているご家族にとって、少しでも参考になれば嬉しく思います。
不用品の片づけをする
健康管理に配慮する
義父母や親戚との関係に配慮する
名刺など必要品をととのえる
こうした小さなことでも、議員にとっては大きな支えになるのです。
何よりも大切なのは、「家庭がやすらぎの場になるようにしておくこと」かもしれません。
外では緊張が続くことの多い議員にとって、家では安心して肩の力を抜けること。
その空間を整えることが、家族にできる何よりの支援といえそうです。