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「政務活動費」の不正をなくすためには【地方議員】

政務活動費は、地方議員が力量を発揮するために必要な、重要な議会費です。この費目を確立するまでには、多くの先輩地方議員が全国で連帯して長年にわたって努力をしてきました。

近年、政務活動費を巡って全国で事件が起きたことはとても残念なことであり、こうしたことが再発しないよう、政務活動費は正しいつかいかたをすることが大切です。

地方議員現職の方、これから議員を目指す方に、この記事がご参考になることを願っています。

筆者について】
山辺美嗣、もしくは山辺美嗣の情報をもとに夫婦で執筆しています。 【やまべみつぐ(山辺美嗣)】 通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、その後県議会議員に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対としても活動した経験を基に執筆しています。現在、政治行政のコンサルタント。 【やまべちかこ(山辺千賀子)】 元人材育成コンサルタント。ニュースキャスターや番組ナレーター(恩師|お茶の水博士・ベルクカッツェ)、女性組織創設運営などの活動を地方で行ってきました。議員の妻としての立場、認知症や身障等の家族(計5人)との暮らしなどで経験したノウハウもお伝えしています。 夫の議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。

目次から必要個所をクリックしてご覧下さい。

政務活動費は使命を果たすためのツール

政務活動は、議員としての使命を果たすための大事なツールです。

「何のために?」「何処で?」「何を調査し?」「誰の話を聞いて?」「その成果を何時?」「どのように活かすのか?」

つねに明確な目的、目標を持って活動し、たくさんの成果を出されんことを期待します。

では、政務活動費を正しく使うために何が大切か、掘り下げて考えてみましょう。

政務活動費は公務をするための費用に使う

結論から言いますと、政務活動費は、地方議員が「公務をするための必要な活動」に使う議会費です。「議員の公務」をしっかり認識していれば、問題が発生することは全く無いと考えます。

地方議員の「公務」自治体の重要な事項を、住民を代表して「議会において討論して決定すること」です。

公務のために必要な、以下のような経費が政務活動費として認められていますので、例を示します。

自治体の重要な事項に関係する経費:
調査研究費(他の地域で実施され成果を上げている、条例や予算の内容を調査する)
要望費(法律改正や、地方対策予算の増額などを国に要望する)

住民を代表するための経費:
広報費(住民に議会活動、政務活動の状況を伝える)
広聴費(住民の意見を聞く)
 
 

ただし重要なことは、「自身で行う活動」であることが絶対条件だということです。例えば、政務活動費を使って外部の調査会社に、他県で行われている農業支援策の「調査」を発注したとします。報告書が入手出来てそれで終わり、としていたら自分が行った調査にはなりません。その報告を基に分析し、自らの地域における具体的な支援策を提案して、はじめて自分で行った調査になる、そのように考えてください。

ところで「国会議員」には政務活動費はないのでしょうか。実は、ないんです。地方議員の政務活動費と類似の使途目的を持つ費目として、国会議員には「調査研究広報滞在費」と「立法事務費」が、必要経費として合計して一人当たり毎月165万円支給されます。これは、領収書不要、支出先記載が不要の議会費です。従って、どのように使っても事件は起きません。政務活動費が領収書や報告書が絶対必要なことと大違いです。これは明らかな差別ですよね。

はなしが横道にそれましたが、国と地方の制度が全く違っていることは記憶しておいてください。

このあとは、政務活動費をどのように活用するか「知っておくべきこと」について、進めていきます。

政務活動費を使ってはならない「私的な活動」とは

政務活動費の使途目的はあくまでも「公務のために必要な活動」です。従って「私的な活動」には充てられません。では、政務活動費の対象とされない「私的な活動」とは何でしょうか。

地方自治法を所管する総務省の見解では:政党活動、選挙活動、後援会活動、 その他の私人としての活動は私的な活動です。

個々に見ていきます。

政党活動:憲法は結社の自由を「個人の」権利として保証しています。ですから私的な活動ですね。
議会には、「会派」があります。政党名を名乗る会派もあることから、「政党」と混同されることがありますが、あくまでも別のものです。会派は、議会運営の単位として、議員が作るグループのことであり、政務活動費は会派にまとめて交付することができるとされ、会派として政務活動をすることが認められています。
選挙活動:選挙に出るも出ないも「個人の」判断ですから、これも私的活動ですね。
後援会活動:後援会は議員を応援する人たちの政治団体ですから、そもそも議員の活動ではありません。
その他の私人としての活動:私的に加入している団体の行事への参加、来賓として招待された行事への参加などは、私的なものとされます。

この様に「私的」なものは排除出来ますが、「公務のために必要」であることを積極的に立証するには研究研修費、調査旅費、資料作成費、資料購入費、広報費、広聴費、人件費、事務所費、事務費の個々の支出が、「公務のために」行われ、実際に「成果があった」ことを示す必要があります。

 

グループ活動に注意!

グループで政務活動の出張をしたとき、こんなことがありえます。

▶ 要所要所に顔を出していたが、少しは皆から外れて私的な旅行として楽しむ

▶ ついていっただけなので視察先のことはよく覚えていない

▶ 報告書は、誰かが書いてくれたと思うが読んでいない

こうしたグレーゾーンに入ることは避けたいものです。政務活動は議員個人に交付される決まりです。各々の議会の判断で、会派に交付することも出来るようになっていますが、その場合でも、個人毎に支出内容が記録され保存されます。(後には公開されます)

グループでの活動は、主体性が意識されずルーズになりやすいので注意が必要です。その場合は、「自分で書いた報告書」を、必ず添付しましょう。

残念な事件

政務活動費不正事件が最初に全国報道されたとき、本当にびっくりしましたね。テレビで泣きじゃくっている議員さんを見て、はじめは笑った人が多いと思う。しかし、日が経過してくると腹が立ち、そしてその後悲しい気持ちになりました。

志を抱いて議員になった人がこんなことをするのでしょうか。日本でこんな事件が起きたことは誠に残念でなりません。

 

兵庫県議会の事件(2014)は世間の注目を集めましたが、その後も

市川市議会(2014)、神戸市議会(2015)、富山市議会(2016)、墨田区議会(2017)、広島市議会(2019)、福井県議会(2020)など、

近年は政務活動費の不正事件が毎年のように報道されています。事件は「カラ出張」「架空請求」など詐欺罪がほとんどです。

2000年に制度化され、2012年に改正が行われた現行の「政務活動費」は、地方自治体ごとに「条例」を定めて使途や支払いについて規定するとともに「規則、要綱」でルールの明確化を図っています。

上に列記したいろんな議会の事件は、全部が制度が出来て以降に起きていますから、明らかに違反であることを知りながら行った「犯罪」です。

 

政治の現場は地方にあります。
地方議員が活躍しやすい社会が日本の豊かさを取り戻すことになると考えています。
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【①地方議員向けに特化した情報】
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【②議員当事者ならではのノウハウや実情が豊富】
連続6回当選の元県議会議長が、勝ち抜いてきたノウハウを公開しています。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対として培ったノウハウもご紹介します。

【③ 地方議員と支援者への応援情報】
官僚・国連勤務・県議経験者の筆者が、地方議員からは見えにくい「国会議員と地方議員の違い」「他国と日本の違い」をふまえて解説しています。選挙法規等は議員目線で読み解いています。議員活動を支えた妻も、人材育成業の経験を活かし、わかりやすい情報を目指して執筆に加わっています。