「自民党派閥の裏金問題」では、公開されないで裏に回った何億円もの大金があることが表面化して事件となりました。
この記事は次の3つの疑問にお答えしようとするものです。
- 政治資金パーティーとは何か
- パーティー券で裏金を作るとはどういうことか
- なぜこれまで隠し通せたのか
- 【筆者/やまべみつぐ】について
- 【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。
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政治資金パーティーとは何か
収支について仮の数字を入れたケースを想定して、政治資金パーティーの仕組みを推測してみましょう。
内 訳 | 合計金額(円) | |
売 上 | パーティー券2万円 x 3千枚 | 6千万円 |
支 出 | 会場費 + 役務費 + 事務費 | 2千万円 |
差 引 | 政治資金収入 | 4千万円 |
この想定では、
「3千枚売り上げたが、実際に参加した人数はそれより少なめで費用は抑えることが出来て」
「収支差額の4千万円が主催した政治団体の政治資金収入になり」
「法に基づいて、会計責任者は収支報告書を提出する」という流れになり、特に問題は見当たりません。
政治団体には様々なものがあり、政治家個人の後援会や資金管理団体のほか、今回問題となっている派閥などは〇〇研究会という名称で届出していますが、これも政治団体です。
ではどのようにして裏金になるのでしょうか。
パーティー券で裏金を作るとはどういうことか
先に想定したケースの政治資金パーティーで、主催者が派閥であった場合を推測してみます。
過少報告の可能性がある。
派閥が所属議員に、1人当たり60枚のパーティー券販売をするノルマがあるとします。50人の所属議員のノルマ合計は3,000枚ですので、1枚2万円だとノルマの合計は6千万円になります。これが収支報告された収入になります。
しかし実際は、所属議員が60枚のノルマを超えて100枚売っているとすれば、議員1人分で40枚分8百万円、本当は売り上げが大きくなるのですが、これはどこに消えたのでしょうか。
キックバックとは?
派閥の場合、所属の国会議員は派閥のパーティー券の一定枚数をノルマと称して引き受ける慣行が行われていました。ノルマを超えた分の売り上げが、派閥から所属の国会議員に還付される仕組みを「キックバック」と呼んでいます。
政治団体の政治資金パーティーの収入は、パーティー券の売上が20万円未満であれば誰が購入したか公開しなくてもよいとされています。
そこで、購入者を公開しなくてもよいとされる一定の金額分について、売り上げが無かったことにすると、表に出せない行き所の無い金となって裏金に回ることが推測されるのです。
パーティ券の購入者が、1件当たり20万円を超えるもの、20万円未満のものは、どのように件数を調整したのでしょうか?
想定しているケースで推測して見ましょう。大口の支援者ですと1件当たり10枚20万円を超えて引き受けてもらえることもあるでしょう。こうした大口の合計購入枚数が、ノルマ合計の3000枚に届かなければ調整は不要です。そして、例えば売上の本当の合計が4500枚であれば、ノルマとの差である1500枚分3千万円がキックバックで裏金に回ると推測できます。
一方、大口の合計枚数が3000枚を超えたときは何件かの大口の会社にお願いして、購入枚数を子会社等に分散して小口に変更してもらっているのでないかと推測されます。
このように派閥の対応次第で、裏金が発生したりしなかったりするのです。
国会議員の裏金は、なぜ今まで隠し通してこれたのか
加えて、その政治団体の中心となる国会議員と国会議員の分身である秘書も、合意の上であるときには彼らも連帯責任を負う仕組みです。
逆に言うと、この3者がグルになればバレないと言う筋書きです。
基本的に、地方議員は国会議員の裏金を知りません。
国会議員は選挙区の地元を離れ東京にいるので、地方議員であっても一般有権者と同様に、国会議員が何をしているかは分からないのです。ですから国会議員に裏金があったとしても、地方議員は知らなくて当然なのです。
国会議員からお金を受け取って地方議員が逮捕される事件がありました。あれは裏金ではないのですか?
選挙に際しての買収事件ではそのようなことがあります。買収そのものが法律違反でありそのお金の出所が問題とされていないため、裏金が使われたかどうかは追及されていません。
お金に色はついていないので、事件となった違法な支出であっても、そのお金の出所が裏金だと判明したことはほとんど聞きません。
ただし裏金は何にでも使いやすいため、有権者からの票の買収、有権者への饗応など違法な支出にも使われていると推測されています。そのほか全くの個人的支出や蓄財に使われて、高価な飲食、貴金属や別荘の購入などにも充てられているのではとも聞きます。
現に、元自民党副総裁だった金丸代議士の事件では自宅から大量の金塊が押収されました。
裏金を含め派閥幹部の示す暗黙のルールには従っておくものだという政治風土は、世襲の場合引継がれやすいことは容易に想像できそうです。
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