多くの議会では、4月下旬から議員の任期が始まっています。
新人議員の皆さんは、初めてのことばかりで戸惑うことも多いかもしれません。
まずは自分にあった「会派選び」ができるよう注意したいものです。
会派選びで大切なのは、「自らの政策と会派の政策が一致するかどうか」だと私は考えています。
なお、会派については地方議会ごとにルールは異なっているので、この記事では一般的な事例に基いて解説しています。
- 【筆者やまべみつぐ/編集やまべちかこ】について
- 【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。【やまべちかこ(山辺千賀子)】
元人材育成コンサルタント。産業カウンセラー・ローカル局ニュースキャスター・ナレーター(恩師|お茶の水博士・ベルクカッツェ)・女性組織創設運営など、仕事の経験と、議員の妻としての立場、認知症や身障等の家族(計5人)との暮らしなどで経験した暮らしのノウハウ等もお伝えしています。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫4人。
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会派とは何か、メリットはあるのか?
そもそも会派とは何でしょうか。
会派は、議会ごとに条例や規則などで、議会運営のための組織として定められています。
地方自治を研究している学者が集まる学会では、会派について実際の機能からみた表現が使われたりします。
学会の通説が用いている「政策実現」という表現を起点にして、会派にはどんなメリットがあるのか、考えてまいりましょう。
会派には、多数を形成するメリット
先ず、会派には多数を形成するメリットがあることです。
議会は審議を尽くしたのちに、多数決で決定を行います。したがって、議員が政策を実現したいときには、自分と意思を同じくする仲間が集まって、多数を形成するよう努力することが必要です。
議員の役割は、議会でよい政策を決定することであり、会派は多数を形成して政策を実現していくための、同志の集団であるといえます。
会派には、議員の活動を議会内で支えるメリット
次に、会派には議員の活動を議会内で支えるメリットがあります。
例えば、新人議員をはじめとする所属議員を対象に、様々な「教育」の場を設け、政策立案能力の向上を図っています。
また、会派は、所属議員で分担して調査を行って政策を立案し、会派として議会全体の意見集約を行って、政策の実現を支援することもしています。
このように議員一人ではできないことを、会派は様々に支えています。
会派制の全国の状況は、どうなっているのか?
例えば条例によって会派制を採用している、千葉県流山市議会の規定を紹介します。
流山市議会の議会基本条例第5条第1項では、会派について以下のように規定されています。
「 議員は、同一理念を共有する他の議員と結成した政策集団として、議会活動を行うための会派を結成することができる。」
次の表にあるように、都道府県議会、指定都市議会、中核市議会、特別区議会(東京23区)では100%、その他の市議会では約93%と極めて高い割合で会派制が採用されています。
その一方で、町村議会では16%と一挙に割合が低くなっていることがわかります。
地方議会区分 | 議会数 | 会派制採用数 | 割合(%) |
都道府県議会 | 47 | 47 | 100 |
指定都市議会 | 20 | 20 | 100 |
中核市議会 | 62 | 62 | 100 |
特別区議会 | 23 | 23 | 100 |
その他の市議会 | 710 | 660 | 93.0 |
町村議会 | 926 | 150 | 16.2 |
合 計 | 1,741 | 962 | 55.3 |
(出所)全国市議会議長会及び全国町村議会議長会の令和4年度調べ等より作成。
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町村議会における会派制の採用が低い理由
私自身が、町議会議長である知人から直接聞いた話をご紹介します。
町村議会議員は政党公認が少なく、ほぼ無所属(無所属議員割合87%)であり、議員定数はごく少ない(全国平均12人)ため、会派の必要性を感じないとのこと。
12人程度ですと、議員が一同に会して議論しても、意見を集約しやすい規模だと考えられます。
会派選びで、「政策の一致」を判断する基準とは?
会派選びで政策の一致を判断するときに、私が推奨する方法を紹介します。
「自助・共助・公助」という用語をご存じと思いますが、これらに対応した政策メニューのうち、当該会派がどの政策メニューを重要とみているかを判断基準とするものです。
政策の区分 | 政策メニュー例 | 政策の目的 |
自助の政策 | 学校教育、社会人教育、商品開発支援、販路開拓支援など | 個人と事業者の自立を支援する |
共助の政策 | 通学路安全、地域商品券、中心市街地活性化、農地基盤整備など | 住民の助け合いを進める |
公助の政策 | 給食費無償化、生活保護、医療費無償化、障碍者援助など | 弱者を放置せず福祉を進める |
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では、この表を参照しながら、政策の区分ごとにどんな特徴があるのか、留意点は何かについて、議論を深めたいと思います。
「自助の政策」の、特徴と留意点
「自助の政策」が目指す具体例
- 教育により個人の能力を高めること
- 事業者を支援して地域経済を活性化すること
例えば、学校教育の水準を上げるためには、小規模校の統合や、小中一貫の義務教育学校への転換、あるいは、早い時期からの英語教育の導入などを進めるのが、この政策の内容になります。
しかし、政策が効果を出すと、地域の評価が高まり、経済も豊かになる可能性があります。
「共助の政策」の、特徴と留意点
「共助の政策」が目指す具体例
- 事業者が協力して地域の買い物客を減らさないこと
- 中心市街地や農地を改修して利便をよくすること
例えば、農業の後継者不足を補うために、複数農家が共同で農地の基盤整備を実施して、農業の機械化を進めることが、この政策の内容になります。
しかし、目指しているのは現状維持であるので、地域の発展を目指すには、新たな政策を立案する取り組みが議員に求められます。
「公助の政策」の、特徴と留意点
「公助の政策」が目指す具体例
- 自己努力だけでは限界にある家庭を保護すること
- 子育て支援や障碍者の支援などに取り組み、弱者を放置しないこと
例えば障碍者の社会参加を進めるために、健常者のなかに障碍者がいることが当たり前の「インクルーシブ社会」を実現していくことが、この政策の内容になります。
しかし、自治体が平均以上の福祉を実施するには、財政の豊かさにより限界があるので、地方税を多く納めてくれる地域経済が必要になります。
政策に、自分の優先順位をつける
ただ、会派内でも「優先順位」をめぐって対立を生んでしまうことがあるんですよ
初当選議員の場合、会派選びは「無所属」や「一人会派」でしばらく様子を見て、それから判断してもよいでしょう。
まとめ
会派について
政策の区分で、会派を選ぶ
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