政務活動費の使途として、中心的な位置づけにあるのが「調査研究費」です。
この記事では、調査研究費として多く使われている「先進事例調査」を取り上げ、その意義について解説します。
- 【筆者/やまべみつぐ】について
- 【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。
先進事例を訪問調査するのが良い理由
政務活動費に含まれる調査研究費は、文献調査や外部機関への委託調査のような使い方もありますが、他地域の議会を訪問して説明を受けたり現場を見学したり、議員との意見交換をしたりすることも広く行われています。
このような先進事例調査(あるいは視察とも言います)にはどんな効果があるのでしょうか。
他の地域で先行して実施され成果を上げている政策の事例は、地元の政策を検討する際に参考事例として大いに役立ちます。
自然科学では、「古い理論」で十分説明できなかったことが「新しい理論」で説明できるようになるのと似ています。
新しい政策は、それ以前の政策が十分でなかった点を補って生まれてきます。
つまり、必ず「前の政策」があり、改善されて「次の政策」が生まれてくるといえます。
他の地域で「前の政策」から「次の政策」がどのような検討を経て生まれてきたのか、そのプロセスを学ぶのだと考えましょう。
今の政策が十分な効果を上げているかどうかを検証することから議論が始まります。
その結果、政策を改善する必要があると認識されてはじめて、調査研究をしようという方向性が出てくるでしょう。
先ずは文献により、現地訪問する先進事例を見つけることが重要です。
現地訪問しないとわからないこと、例えば「どんな困難に直面したのか」「条例制定により効果があったこと」などの体験談を聞くことができると政策立案に役立ちます。
政策は、条例と予算で構成されます。
先ず条例ですが、条例を提案し議決するのは議員ですが、実行するのは行政部局です。ですから行政部局の理解を得ると条例の実行が円滑に進みます。
予算については、議員には提案権がなく修正権のみとなります。よって予算の新設を伴う政策には提案権のある行政部局の理解が重要です。
なお、議会事務局は議員提案を支援してくれるとともに、異動により行政部局で働く機会もあるので、同行することが重要だと考えましょう。
地方議会はお互いが「先進事例」になる
他の議会を訪問することが重要だと書きました。その逆もまた真理です。
他の議会の訪問を受けることはとても勉強になります。こちら側からも質問したり、意見交換したりできるからです。
こちらに訪問された議会を、次には当方が訪問することになれば、いっそう相互に勉強する機会が拡大しますね。
どの議会にも他の議会の参考になるような政策が必ずあります。
つまり、お互いが「先進事例」だと言えます。