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【政務活動費問題】の根本解決には|地方自治法の改正が必要です

 

この記事では、別記事で書いた政務活動費制度の根本の問題は何かに対する「解決策」を提案しています。 

別記事では、政務活動費制度の根本的な問題としてつぎの5点を示しました。(詳細は別記事をご覧ください。)

  1. 国の制度ではない (国は法律で政務活動費という名称を決めただけ)
  2. 目的が不明な制度 (地方議会の何を強化しようとするのか不明である)
  3. 制度として不安定 (基本事項が不明なままに交付の仕方のみを決めている)
  4. 議員1人当たりの金額に大きな格差 (人口横並びや財政状況で月額を決めている)
  5. 地方議員に厳しく国会議員と不平等 (国会議員にはゆるい制度がある)

 

 

これらの問題をどのように解決すればよいのかを提案しています。

【筆者/やまべみつぐ】について
【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。

 

 

国会議員の制度はどのように定められているのか?

先ずは、国会議員の公務費用の支給制度を点検して、地方議員の制度を検討するたたき台にしましょう。

国会議員には地方議員の政務活動費と同じ内容の費用が、2つの法律に基づいて国費から支給されます。

 

第1は 「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」

第九条 各議院の議長、副議長及び議員は、国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うため、調査研究広報滞在費として月額百万円を受ける。
2 前項の調査研究広報滞在費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。

この法律で、国会議員の給料である「歳費」、JR乗車券や航空券が国会議員に無償で交付される「旅費」と並んで定められている「調査研究広報滞在費」は、使用した証拠書類が不要な「手当」です

 

 

第2は 「国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律」

第一条 国会が国の唯一の立法機関たる性質にかんがみ、国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するため必要な経費の一部として、各議院における各会派(※)に対し、立法事務費を交付する
2 前項の立法事務費は、議員に対しては交付しないものとする。
第三条 立法事務費として各会派に対し交付する月額は、各議院における各会派の所属議員数に応じ、議員一人につき六十五万円の割合をもつて算定した金額とする。

(※)国会法では、各院とも2人以上をもって会派を届出できることになっています。

立法事務費も、使用した証拠書類が不要な「手当」です。

以上の2つの手当、「調査研究広報滞在費」「立法事務費」の合計165万円が、国会議員一人当たりに対する費用の交付月額となります。

 

 

 

地方議員の政務活動費は、国の制度としての整備が必要

政務活動費は、現在は国の制度ではなく地方ごとの制度であり、地方自治体ごとに条例で定めることができると地方自治法に定められています。

しかし、本来的には国の制度として定められるべきものです。

なぜなら、議員の公務に関する費用の支給について、国会議員であるか地方議員であるかの違いはありえないからです。

地方議員が議会において立法(条例制定)により、住民の福祉と地域の発展を促進することと、
国会議員が国会において立法(法律制定)により、国民の福祉と国家の発展を促進することは、
全く同様に議員の公務だからです。

 

 

国会議員の制度と同じものとして、地方自治法改正により地方議員の政策研究活動費を新たに次のように定める必要があります。

地方自治法改正の(案)

議会が当該地方公共団体の議事機関であることにかんがみ、議員の政策形成に関する調査研究等の増進に資するため必要な経費の一部として、
議会会派(1人会派を含む)に対し、政策研究活動費を交付する

政策研究活動費は、会派による立法に関する調査研究、並びに会派に所属する議員による当該地方公共団体に関する調査研究、広報、住民との交流、滞在等の活動を行うため、
条例に定めるところにより会派に交付する」

「政策研究活動費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない」

国は政策研究活動費の財源を確保し、地方公共団体に交付するものとする」

 

 

 

国と地方の協議の場に「議案」として提出すべき

「国と地方の協議の場」は、国と地方が対等な立場で問題を解決するための「公式の場」です。

地方自治に影響を与える国の政策の企画、立案、実施について、関係各大臣と地方代表が協議する場であり、2011(平成23)年度に法律が成立し施行されました。

 

国と地方の協議の場に関する法律(平成23年5月2日公布、同日施行)

第一条(目的) 国と地方の協議の場(以下「協議の場」という。)は、地方自治に影響を及ぼす国の政策の企画及び立案並びに実施について、関係各大臣並びに都道府県知事、都道府県議会の議長、市長、市議会の議長、町村長及び町村議会の議長の全国的連合組織の代表者が協議を行い、もって内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条第一項第三号の二の改革の推進並びに国及び地方公共団体の政策の効果的かつ効率的な推進を図ることを目的とする。

 

 

2011(平成23)年6月13日の第1回から、2023(令和5)年5月31日の第44回までの国地方協議の議事録が内閣官房のホームページに掲載されていますので、すべてに目を通しました。
地方議会や地方議員の制度改革についての議論は皆無です。2012(平成24)年の地方自治法改正で政務活動費に名称変更して「全部解決済み」という勘違いがあるのでしょうか?
国と地方の協議の場は、関係各大臣と地方6団体の各代表が構成員であり、地方側からも議案を提出できるようになっています。地方議会では、都道府県議会議長会、市議会議長会、町村議会議長会の代表3名がメンバーです。
「政務活動費問題の根本解決」を議案として提出できるよう、地方議会の全国団体で議論を深めていただくことが重要です。

 

 

 

 

地方議会の全国団体でモデル条例を整備することが重要

法律改正を進めるとともに、地方は「モデル条例」を整備して、各自治体が定める条例の統一を図る必要があります。

モデル条例を参考に、各自治体は政策研究活動費の交付に関して必要な事項を条例で定めます。

〇使途の指定
〇交付月額
〇会派からの支出報告
〇会派からの調査研究等の活動報告
〇議長の権限と義務

こうした公務の費用を助成するための「政策研究活動費」設け、従来の「政務活動費」は廃止する必要があります。

 

以上のように政務活動費の根本的な5つの問題は解決できることを詳述してきました。

国会議員と地方議員は立法府の構成員として同質の職務を担っています。
そのため国会は『国会議員の制度』を整備するときは、まったく同じように『地方議員の制度』を整備することを必ず行っていただきたいと思います。
働く場の違いはありますので、助成する場合に単価など量的に異なることはあっても、職務は質的に異なるものではないからです。

 

 

>本ブログ3つの特色

本ブログ3つの特色

【①地方議員向けに特化した情報】
既存の議員関連情報(マスコミ報道や選挙マニュアル等)は国会議員を想定したものが中心です。地方議員の実情に合った情報をお探しの方におすすめです。

【②議員当事者ならではのノウハウや実情が豊富】
連続6回当選の元県議会議長が、勝ち抜いてきたノウハウを公開しています。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対として培ったノウハウもご紹介します。

【③ 地方議員と支援者への応援情報】
官僚・国連勤務・県議経験者の筆者が、地方議員からは見えにくい「国会議員と地方議員の違い」「他国と日本の違い」をふまえて解説しています。選挙法規等は議員目線で読み解いています。議員活動を支えた妻も、人材育成業の経験を活かし、わかりやすい情報を目指して執筆に加わっています。