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【能登半島地震】全国の地方議会は何ができるか|防災・復興政策の共同研究を

《 写真はイメージです 》

令和6年元旦、能登半島を襲った大地震は甚大な被害をもたらしています。

困難に直面して、全国の地方議会は何ができるでしょうか、また何をすべきでしょうか。

私はこの機会に、

現在の防災と復興の政策について再点検をしていただきたいと念願します。

 

官僚と県議会議員を含めて、50年の間に身近でたくさんの災害を経験しました。

また、遠方の地域で起きた大災害についても、現場を調査し復興の過程も見てきました。

確かに今日までに災害時に対応できる備蓄も充実し、構造物の耐震評価も進んできました。

しかし今でも、

大規模災害後の住民の暮らしの復興には、多大の困難が残され、また長期の期間を必要としています。

 

【筆者/やまべみつぐ】について
【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。

 

被災地の緊急支援

能登半島地震によって、幹線の能登里山海道は多くの箇所で崩落し、その他の道路を含め能登半島全体が救援資材の運搬を優先して一般通行が制限されています。

全国からの応援を得て、不明者の捜索に当たる消防、警察、自衛隊も不休の救命活動を続けています。

厳冬の日本海から吹く北風にさらされている被災者に必要な物資を送ることに、被災住民の緊急避難として要保護者の2次避難に、国も全国の地方自治体も一生懸命です。

全国の地方議会がいまできることは
緊急の支援として被災支援寄付金の呼びかけをすること
土砂・ガレキ撤去支援の段階になれば、ボランティアへの参加を呼びかけることです。

石川県を始め、被災地ではボランティアサイト及び各市町村のボランティアセンターへの登録を呼びかけています。

 

地方議会ができること、すべきことはこれで終わりなのでしょうか。

東海、東南海、南海の大地震が起きる確率は日々高くなってきています。全国のすべての地方には能登半島と同じリスクがあるのです

 

暮らしの復興に道筋をつける

能登半島地震の被災地では、自宅、道路、電気、ガス、水道といった暮らしを支えていた基盤や、生産販売施設、農地、漁港といった生業の基盤も含め、インフラの被害はあまりにも甚大です。

これらの完全復旧には膨大な費用と時間がかかるので、当面の復旧が優先されることになります。

そして、何よりも大事なのは

被災住民の「暮らしの復興」ができるかどうかです。

 

被災住民は「どこで?」暮らしを復興するのが良いのか

能登半島地震は、阪神淡路地震とも、東日本地震とも異なる点があり、また共通点もあります。

 

相異点は、液状化と、がけ崩れです。

被災箇所での原状復帰は、「避けるべき」ところもある。

能登半島地震では以前は海浜であった地域や、河川であった地域の地盤で液状化が多発しています。これは地質に由来するものであるため、復旧しても再び大地震が来れば再度液状化することが予想されます。

また、海岸沿いや山間部で、危険指定されていなかった箇所でも多くのがけ崩れが発生しています。年代の若い堆積層や人工的な造成地では起こりやすい現象ですので、原状復帰しても再度のがけ崩れが懸念されます。

こうした箇所では、合理的に考えると原状復帰を「避けるべき」と判断することになるでしょう。

 

 

一方、共通点は、津波と高齢者です。

津波被災した箇所の住民は、高台や他の安全な地域に移転するしかない。
海底の活断層がズレたため、能登半島地震でも津波が発生し被災しました。
東日本震災の津波被災地の対応に学ぶことになります。三陸海岸では、原状復旧せず安全な地域に移転し復興を図っています。

 

高齢者が幸福である暮らしの復興とは?
65歳を超える高齢者が、被災し生活の基盤を失ったとき、どんなふうに暮らしを復興できるのでしょうか? そして、幸せを取り戻せるのでしょうか?
そもそも被災する以前から、高齢者は顔見知りの近所の住民と助け合って暮らしています。いくら不便なへき地でもそこに安全と安心があり、幸福だったのです。
暮らしていた土地が危険個所となった場合には、安全な土地で幸せな復興を図るため、高齢者は集団で移転し団地を作る方法がよいと言われています。
かつて、満州や南方から裸同然で引揚げてきた人々が身を寄せた「引揚者住宅」「引揚者団地」がモデルです。「被災高齢者復興団地」のような制度を作ることは検討に値します。

 

住宅と生業の再建、再就職の支援

被災後の生活を元の状態に復帰するには、住宅と事業用に所有していた施設の再建が必要です。
働き盛りの世代であれば当然再建を検討しますが、自力で行うためには火災保険・地震保険を使い、自己資金分は借り入れを行う必要があります。
また一方で被災地での生活の再建が難しい場合には、被災地を離れ新たに就職する道を探すことになります。
いずれの場合でも、災害支援金、援助金があれば支えになります。

 

火災保険・地震保険が補償してくれるもの

火災保険は、建物や家財(家具や家電などの生活用品全般)を対象に、火災の被害だけでなく、落雷や台風などの自然災害、建物の水ぬれ、盗難被害などのオールリスクを補償対象としています。
地震保険も多くの自然災害をカバーしています。ただし、金額的には補償限度額は火災保険の半分になります。
火災保険で補償される、火災以外の主な自然災害には、次のようなものがあります。
落雷でパソコンが壊れた、台風などの強風で屋根瓦が飛んでしまった、雹(ひょう)で窓ガラスが割れてしまった、降り積もった雪の重みでカーポートがつぶれてしまったというような被害は、雷災・風災・雹災・雪災補償で補償を受けることができます。
地震保険で補償されるのは、地震、津波、火山噴火などの自然災害です。
こうした損害保険の補償金は再建に必要な金額のごく一部にしかならないため、自己資金相当分は借入することになるので慎重な判断が求められます。

 

生業の再建には、借り入れでなく資本金を

中小企業育成は、低利貸し付けが中心です。何故でしょうか?

日本の金融機関は貸付利息で利益を得る経営構造だからです。国が政策として利子補給をしてくれれば、金融機関は低利で貸し付けても損はしません。

海外では企業価値の上昇で利益を得るエクイティーファイナンスと呼ばれる「資本注入」が行われます。日本では、ベンチャー育成の金融には導入されましたが、一般の金融にはありません。

被災地の中小零細事業者が、資金貸付で支援を受けても返済金で苦しむのは目に見えています。

被災地の中小零細企業復興のために、公的に資本を注入する制度が必要なのではないでしょうか。

 

再就職の支援に「被災者パスポート」の発行を

震災で被害を受けた住民には「り災証明」が出されます。主に損害保険請求に使われたりするためのものであり、それ以上には使われていないようです。

被災をして働く場を失った住民は、現地で事業復興に挑戦する人を除けば、仕事を求めて再就職することになります。

住み慣れた土地でない遠くに移動した住民が、国や地方自治体などの再就職支援を受けるためには、有効期間のある「被災者パスポート」が身分証の役割をすることは施策として一案となりうるでしょう。

 

 

全国地方議会団体で早急に研究会の設置を

阪神淡路も東日本も、そして能登半島も他人事ではありません。明日は我が身の話なのです。

私はこの記事で述べてきたように幾つかの気づきがありました。全国の地方議員現役の皆さんも様々な気づきがあったと思います。

1人1人の気づきを「集合知」に変え、今後の対応について意見を共有することが大事と思います。

各議会で研究会を設置しょう

みなさんの所属する議会で各議員が気づいたことを集約することが大事です。それによって、全国の他の議会と連携する基礎ができます。

 

全国地方議会団体で研究会を設置しよう
みなさんの議会が加入している「全国町村議会議長会」「全国市議会議長会」「全国都道府県議会議長会」で、研究会を立ち上げていただきたいと私は念願しています。

 

(目的)災害と復興を自分たちの地域のこととして共有する
(研究)何に対応出来ていたか、出来ていなかったかを検証する
(行動)現行の復興支援で足りていない施策の制度化を国に求める

 

 

いまこそ地方議会は求められています。

防災と災害復興支援をより良い制度にして、住民がもとめる安心を提供することです。

研究会が設立され成果を出すことを願っています。

>本ブログ3つの特色

本ブログ3つの特色

【①地方議員向けに特化した情報】
既存の議員関連情報(マスコミ報道や選挙マニュアル等)は国会議員を想定したものが中心です。地方議員の実情に合った情報をお探しの方におすすめです。

【②議員当事者ならではのノウハウや実情が豊富】
連続6回当選の元県議会議長が、勝ち抜いてきたノウハウを公開しています。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対として培ったノウハウもご紹介します。

【③ 地方議員と支援者への応援情報】
官僚・国連勤務・県議経験者の筆者が、地方議員からは見えにくい「国会議員と地方議員の違い」「他国と日本の違い」をふまえて解説しています。選挙法規等は議員目線で読み解いています。議員活動を支えた妻も、人材育成業の経験を活かし、わかりやすい情報を目指して執筆に加わっています。