選挙に出るなら、お金はいくら必要なのか、現状の選挙はいくらお金がかかっているのか、リアルな金額をご紹介しましょう。
節約できるところと、そうではないところなどお確かめください。
あなたの今後の選択肢として「議員」が脳裏に浮かんでいるなら、検討してみる価値はありそうです。
- 【筆者について】
- 山辺美嗣、もしくは山辺美嗣の情報をもとに夫婦で執筆しています。
【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、その後県議会議員に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対としても活動した経験を基に執筆しています。現在、政治行政のコンサルタント。【やまべちかこ(山辺千賀子)】
元人材育成コンサルタント。ニュースキャスターや番組ナレーター(恩師|お茶の水博士・ベルクカッツェ)、女性組織創設運営などの活動を地方で行ってきました。議員の妻としての立場、認知症や身障等の家族(計5人)との暮らしなどで経験したノウハウもお伝えしています。夫の議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。
こんな疑問に
- 選挙にお金はいくらかかるんだろう
- 何から始めたらいいのだろう
- 現実に用意できる金額かどうか知りたい
この記事は、議員を目指す方、議員になって間もない方、リベンジを目指す方、またその関係の皆さまを想定しています。
選挙に必要なお金、実際に見聞きしてきたリアルな金額
現状の選挙はいくらお金がかかっているのか把握しておくことは大切です。
お金に関するリアルな情報はほとんど出回っていないと思います。
ここでは大きく4つにわけました。
- 選挙告示「前」から、かかるお金は「自費負担」
- 選挙告示「後」に、かかるお金で「自費負担」分
- 選挙告示「後」に、かかるお金で「公費負担」分
- 供託金:町村議15万円、市議30万円、県議60万円(選挙後、戻ってるくるけど、戻ってこない人も ※解説別記あり)
①と②の「自費負担」は、候補者次第、工夫次第のところです。
少なくとも40~200万円 市議は100万円以上、県議は200万円以上と考えておくとよいでしょう。
「自費負担」(①と②の合計金額)として、現実に見聞きするのは次の通りです。
市議や県議の場合、無競争であっても、200万円から600万円はかかっているでしょう。
市議や県議の場合、100万円以下で済むのは、無競争で告示日だけで選挙戦が終わった、選挙区が小さい、お金をかけないことが強みとしてアピールできた、などのケースです。
市議も激戦になると600万円以上の場合も生じます。
どちらかといえば若い候補者が打ち出すイメージですよね。
「選挙のお金」、現状がよいとは到底思えませんが、「お金が無くても当選できる!」などと安易に考えてはいけない事情を把握されることをおすすめします。
お金をかけない選挙は理想です。
実際にどこをどう節約できそうか、イメージしながらお読みください。
では、詳しくご紹介していきます。
何の選挙か:村議会議員、町議会議員、市議会議員、県議会議員
政治活動期間:選挙告示日の3か月前から ※ かんたん解説別記あり
選挙活動期間:5日以上
選挙区の様子:日中は駅前でも人はまばら、第一次産業従事者少なくない、シャッター通り少なくない、人口減少傾向
・浮動票で当選する都市型選挙
・議員のなり手がなく無競争で当選している選挙
告示前の活動は「選挙活動」ではなく「政治活動」です。
告示前に「選挙活動」をすると公職選挙法違反となります。
「選挙活動」の選挙費用は条例で上限が決まっています。
「政治活動」にかかる費用は「自費負担」で「金額は無限大」です。
選挙告示「前」、「自費負担」のお金
候補者次第、工夫次第で節約も可能なところです。
選挙告示「前」、「自費負担」、いくらお金がかかるのか
合計金額の目安
「最低金額の合計(下記青紙内、赤文字部の合計)」 17万円
現実には、市議や県議の場合は、100万円以上、条件によってはそれ以上かかることもあると想定しておくとよいでしょう。
選挙告示「前」、「自費負担」の、主な使途項目
お金は、何に、かかるのか、項目をあげてあります。
【 】の中は参考情報(主に変動する要因)です。
- 活動用チラシ等印刷物(写真撮影、デザイン、室内ポスターなど含む):3万円~【制作費や枚数などで30万円以上の場合も】
- 活動用名刺:1万円~【スタッフ用なども含めると5万円以上の場合も】
- 候補者用選挙用品(たすき、白手袋、イメージカラージャンパーなど):1万円~
- 運動員用選挙用品(イメージカラージャンパーなど):1万円~【質と数により20万円以上の場合も】
- 音響機材(拡声器など):1万円~【1~20万円の機材をどの程度用意するのか】
- 選挙事務所借料:1万円~【「1~50万程度/月額」、何か月設けるのか。賃貸か、プレハブ建築か、自宅などの無償提供か】
- 選挙事務所水光熱費:1万~【「1万~/月額程度で、何か月使用するのか】
- 駐車スペース借料:0.5万以上【「0.5万円~/月額」、何か月借りるのか、自宅などの無償提供か】
- 備品レンタル費(机、イス、コピーFAX機など):2万円~【「20万円以上の場合も/月額」を何か月借りるのか、自宅などからの無償提供か】
- 車両費(車両、ガソリン代、高速代など):1万円~【「1万~/月額で、何か月、何台使うのか、自宅用などの無償提供か】
- 臨時電話(レンタル携帯など):1万円~【「1万~/月額のものを、何か月、何台使うのか、自宅などで無償提供か】
- ミニ集会実施料(会場借料、資料代など):0.5万~【「0.1万程度~/会場費」、実施回数】
- 後援会臨時総会など開催費(会場借料、演出費、資料代など):1万~【「1万程度~/会場費」、収容人数、演出費、実施回数】
- 消耗品など(住宅地図、資料コピー代、マイク電池代、筆記具、掃除用具など):1万~【「1万程度~/月額」を何か月、どの程度、使用するのか】
- 茶菓子代:1万~【「1万程度~/月額」を、何か月、用意するのか、カンパ制にするのか】
© MiraiProject合同会社 無断転載を禁止します。
ではこの金額は、どのような活動のために使われるのか、ご紹介します。
選挙告示「前」、「自費負担」で、どんな活動をするのか
応援してくださる方を一人でも増やすために活動します。
「公職選挙法」に照らして、候補者の後援会や政治団体として活動することが「建て前」になっているともいえます。
どんな活動をするの? 例
- チラシなど印刷物を配る(街頭頒布、ポスティングなど)
- 街頭演説をする(駅立ち、辻立ち、自転車まち巡り、街宣カー車上立ちなど)
- ミニ集会を開く
- 挨拶回り(個人宅訪問、会社訪問など)
- 後援会への入会お願い
- 後援会事務所開設(活動の拠点づくり、「後援会看板」を立てるなど)
- 屋内ポスター掲示
すべて「政治活動(後援会活動、政治団体活動など)」として行います。
この選挙告示「前」の期間に
「橋本かんなに投票してください」
「吉沢りょうです、一票をお願いします」
などと言ってしまうと違反になります。
選挙告示「後」、「自費負担」のお金
ここも、候補者次第、工夫次第で節約も可能なところです。
選挙告示「後」、「自費負担分」、いくらお金がかかるのか
金額の目安
「最低金額の合計(下記青紙内、赤文字部の合計)」 23万円
現実には、市議や県議の場合は、100万以上、条件によってはそれ以上かかることもあると想定しておくとよいでしょう。
選挙告示「後」、「自費負担」の、主な使途項目
お金は、何に、かかるのか、項目をあげてあります。
【 】の中は参考情報(主に変動する要因)です。
- ウグイス日当:7.5万円~【「1.5万円/日」を、1人、5日間】
- ウグイス用選挙用品(白手袋、イメージカラージャンパーなど):0.5万円~
- 運動員日当:5万円~ 【「1万/日」、1人、5日間】
- 演出費(花、ダルマなど):0.5万~【会場の規模など】
- ハガキ作成費(デザイン、印刷費、あて名書きなど):0.5万~【会場の規模など】
- 選挙事務所借料:0.5万円~【何か月設けるのか。賃貸か、プレハブ建築か、自宅などの無償提供か】
- 選挙事務所水光熱費:0.5万~【「1万~/月額程度で、何か月使用するのか】
- 駐車スペース借料:0.5万以上【「0.5万円~/月額」、何か月借りるのか、自宅などの無償提供か】
- 備品レンタル費(机、イス、コピーFAX機など):0.5万円~【「20万円以上の場合も/月額」を何か月借りるのか、自宅などからの無償提供か】
- 車両費(車両、ガソリン代、高速代など):2万円~【選挙カー以外の運動員用など】
- 臨時電話(レンタル携帯など):1万円~【「1万~/月額のものを、何か月、何台使うのか、自宅などで無償提供か】
- 個人演説会実施料(会場借料):0.5万~【「0.1万程度~/会場費」、実施回数】
- 消耗品など(筆記具など):1万~【「1万程度~/月額」を何か月、どの程度、使用するのか】
- 茶菓子・弁当代:2.5万~【ウグイスや運動員の弁当「500円/一食」×「ウグイス+運動員」×5日間 ほか】
© MiraiProject合同会社 無断転載を禁止します。
上記ではウグイスさんを一人しか頼んでいません。
もし、1日2人、5日間頼むと、15万円かかります。
ウグイスさんが、1日、のどが持つとは思えませんので、ローテーションを組むなら、1日4人で、30万に跳ね上がります。
詳しく見ていくと、「普通」の選挙がいかにお金がかかっているかがお分かりいただけると思います。
ではこの金額は、どのような活動のために使われるのか、ご紹介します。
選挙告示「後」、「自費負担」で、どんな活動をするのか
選挙告示「後」とは、「選挙運動」期間
「この候補者に投票してください」「私が候補者です、宜しく」などと、選挙カーも使ってお願いする期間です。
これができるのは、告示日、立候補が受け付けられた「後」から、投票日前日(終日)の期間だけです。
戸別訪問や、署名運動などは禁じられています。
どんな活動をするの? 例
- 立候補届け出
- 出陣式
- 選挙ポスター貼り
- 遊説(選挙カーも使用)
- 事業所訪問(朝礼や休憩時などに投票のお願い挨拶)
- 個人宅訪問(投票のお願い挨拶)
- ハガキ出し
- 個人演説会(総決起集会など)
選挙告示「後」の活動についても、詳しくは後日、別記事を用意します。
選挙告示「後」、「公費負担」のお金
選挙費用は公費でまかなわれる⁈
なんだか夢のような話ですね。
実際にはこの金額では済まないとはいえ、ありがたい「お金」です。
選挙告示「後」、「公費負担」、いくらお金がかかるのか(選挙管理員会が負担してくれる費用)
合計金額の目安
「最低金額の合計(下記青紙内、赤文字部の合計)」 31~170万円程度
選挙告示「後」、「公費負担」の、主な使途項目
お金は、何に、かかるのか、項目をあげてあります。
【 】の中は参考情報(主に変動する要因)です。
数字が小さいのは概ね村議会です。
- 選挙カー費:18万~ 【18~58万円程度、車借上げ代、運転手日当、ガソリン代】
- 選挙ポスター印刷費:8万~ 【8~60万円程度】
- 選挙ビラ印刷費:1万~ 【1~12万円程度】
- 選挙運動はがき郵送代:4万~ 【4~40万円程度、52円郵送代×「枚数(800~8,000枚)」程度】
© MiraiProject合同会社 無断転載を禁止します。
供託金
町村議15万 市議30万 県議60万
惨敗すると没収される、とは? 「供託金」
返ってくるはずの供託金が没収されるのはどんな場合かは、「供託物没収点」を求める計算式で予測できます。
ただ通常、没収されることはまずありませんのでご安心ください。
いったんとはいえ、自腹を切って供託金を払う候補者は、それ相応の覚悟で選挙活動を行うことになるので、普通に選挙活動を行えば、供託金は戻ってくると考えてもよいでしょう。
供託物没収点とは
有効投票数÷議員定数×1/10
・人口12万人の市(有権者100,000人x投票率60%)
・有効投票数 60,000 票
・議員定数 21 人
・没収点 286 票
この例だと当選ラインは2,000票程度。
500票で落選した場合でも、供託金は没収されません。
供託金と、公費負担の選挙費用に関する「注意点」
後払いなので、お金の準備は必要
供託金は、候補者は自腹で立て替えて、いったんは支払う必要があります。
公費負担(はがき郵送代をのぞく)は、候補者と契約した業者がいったん立て替えてる必要があります。
「供託金」が戻ってくるのも、「公費でまかなわれる選挙費用」が業者に入金されるのも、選挙後です。
つまり候補者は現金を準備することが重要です。
選挙カーの事業者や印刷事業者には、すぐには入金がないことを、あらかじめ了承いただくことも必要です。
キャッシュフローを疎かにしていると、手元資金がなくなって身動きが取れなくなることも生じます。
選挙期間中に見苦しい事態になるのは評判を落とすことにもつながりかねません。
十分に注意しましょう。
目安となる金額は、統計的データがなかなかみつからない中でとりまとめましたので、不備な点など生じている恐れがあります。
地方選挙の当事者、または関係者として、多くの実戦から得たリアルな数字として、ご参考になれば幸いです。
お気づきの点等ございましたら、どうぞお知らせくださいますようお願いいたします。