⇧ スライドするとカテゴリーがご覧いただけます ⇧

亀田製菓のインド人CEOの発言が誤解された理由とは?日本企業の未来を考える

亀田製菓の代表取締役CEOであるレカ・ラジュ・ジュネジャ博士の発言が誤解され、昨年12月にはSNS上で炎上し不買運動にまで発展しました。この問題は、企業に対する中傷として極めて残念な事件ですが、同時に日本社会全体におけるグローバル化や情報リテラシーの問題を浮き彫りにした出来事と言えます。

本記事では、ジュネジャ博士の履歴や受賞歴と発言の真意、さらに亀田製菓の海外戦略を解説して、今回の批判が的外れである理由について解説します。

【筆者/やまべみつぐ】について
【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。

亀田製菓のインド人CEO、ジュネジャ博士の受賞とその意味

インド政府から「海外で活躍するインド人」として表彰

レカ・ラジュ・ジュネジャ博士は、2025年1月8日から10日にかけてインドのブバネーシュワルで開催された第18回プラヴァシ・バーティヤ・ディヴァス(Pravasi Bharatiya Divas)において、インド政府から「Pravasi Bharatiya Samman Award-2025」を受賞しました。

この賞は、インド国外で優れた貢献を果たしたインド人に贈られる最高の栄誉のひとつであり、彼の科学技術分野での業績が認められたものです。

日本の企業で長年にわたり活躍し、亀田製菓のグローバル戦略を推進してきたジュネジャ博士の功績は、国際的にも高く評価されています。このような受賞歴を持つ人物の発言が、誤解や偏見によって炎上したことは非常に残念なことです。

レカ・ラジュ・ジュネジャ博士はどんな人?

1952年生まれ、パンジャブ大学理学部微生物学修士修了。1984年に大阪大学工学部に研究員として来日。1989年に名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程を修了、同年太陽化学に入社。2003年に同社代表取締役副社長に就任後、2014年ロート製薬副社長を経て、2020年に亀田製菓代表取締役副社長に就任、2022年6月から代表取締役CEO。国籍は日本。

グローバル企業としての亀田製菓

亀田製菓は、日本国内の米菓市場でトップシェアを誇る企業であり、海外市場への進出にも積極的です。特に、アメリカや中国、タイなどに製造拠点を持ち、現地の需要に合わせた製品開発を行っています。

こうした海外展開の一環として、現地での雇用創出も行っており、世界規模での事業展開を進めている企業といえます。

したがって、ジュネジャ博士が「日本企業も、もっと外国人を雇用すべき」とメディアの取材に答える形で発言した背景には、グローバルな視点から見て日本企業が更に成長するためには、人材もグローバル化していく必要性があるとの考えが基盤にあると理解できます。

 

「外国人雇用」発言がなぜ誤解を生んだのか?

「日本企業ももっと外国人を雇用すべき」という発言の真意

ジュネジャ博士は、日本の人口減少や労働力不足の現状について自ら現場を見ており、日本企業が国際的な競争力を高めるためには多様な人材を積極的に採用すべきだと発言したものです。

しかし、一部のメディアではこの発言が「日本はもっと移民を受け入れるべき」との視点で報じられました。

その結果、SNS上では「外国人優遇」「日本人の雇用を奪う」などの的外れな批判が噴出し、亀田製菓の不買運動が広がる事態となったのです。

誤解の広がりとSNSでの炎上

この問題は当初報道したAPを引用して一部の2次的な報道が誤報であったことが原因となったと指摘できます。そのことと同時に、SNSの拡散力の強さによって誤報が一気にひろがったことに注目すべきでしょう。断片的な情報が拡散され、事実がどんどん歪曲されて伝播してしまうケースとなりました。

また、一部のユーザーは「亀田製菓が中国産の米を使用している」という別の話題を持ち出し、さらなる炎上を引き起こしました。しかし、これは亀田製菓が世界展開する企業であることを考えれば、全く的外れな批判であるといえます。

今回の炎上が示す日本の課題

情報リテラシーの重要性

今回の騒動は、情報の誤解や偏った報道が社会に与える影響を図らずも明確に示すことになりました。メディアは正確な情報を伝える責任を持っていなければなりませんが、その際受け手側がどう理解するかを推測し、表現を含め情報を精査することが事前に求められると言えます。

また情報を受け取る側の一般市民にも、一部の「外国人排除」や「外国原料排除」といった偏った過激な思想に支配されないよう、冷静な情報リタラシーを持つことが重要であると思われます。

日本企業のグローバル戦略と人材問題

日本では人口減少に伴い、労働力不足が深刻化しています。

企業が生き残るためには、グローバルな視点での人材確保が不可欠と言えますが、国民に広くこの認識が広まっている状況ではないようです。

一般の日本国民は、世界で活躍するいろんな人種の人々をあまりにも知りません。特にインド人は、古くから世界に進出しており、トップの地位で活躍する人を多く輩出してきました。

マイクロソフトのCEO兼会長サティア・ナデラ氏や生成AI担当副社長のアパルナ・チェンナプラガダ氏は、ともにインド人です。グーグル及び親会社のアルファベットの最高責任者ビチャイ氏もインド人であり、ハイテックの分野でのインド人の活躍は顕著です。

英国の首相になったリシ・スナク氏はインド系移民2世です。日本との関係では、第二次大戦後の極東裁判で日本の無罪を主張したパール判事は、当時世界の法曹界でアジアを代表するインドの法学博士でした。

中国産米を使用することへの批判は的外れ

亀田製菓は、中国に工場を持ち、現地の消費者向けに製品を生産しています。

中国の工場では中国産のもち米を使用することがありますが、こうした現地調達はコスト面や現地工場の地場での定着を考慮した合理的な判断であるといえます。

海外の現地市場向けの製品が日本にも流通することはありえますが、それは日本企業が世界規模で事業展開している証であり、中国産原料の使用を伏せていたといった批判は短絡的でしょう。

まとめ:冷静な議論が求められる時代

今回の騒動は、メディアの報道の仕方や情報の受け取り方によって、どれほど大きな誤解が生まれるかを示しました。ジュネジャ博士の発言の意図を正しく理解し、日本の企業が国際社会でどのように立ち回るべきかを、冷静に考える必要があります。

また、亀田製菓の中国産米使用に対する批判は、グローバル企業の戦略を無視したものに過ぎません。日本の企業には、規模の大小を問わず今日グローバルな視点が求められています。

消費者としては、製品の原材料や製造背景について、正確な情報をもとに理解し判断することが求められています。

今後、日本社会がどのように多様性を受け入れ、国際競争力を高めていくのかを考える上で、今回の問題は重要な示唆を与えています。感情的な反応ではなく、冷静で論理的な議論が求められる時代になっているのではないでしょうか。

 

>本ブログ3つの特色

本ブログ3つの特色

【①地方議員向けに特化した情報】
既存の議員関連情報(マスコミ報道や選挙マニュアル等)は国会議員を想定したものが中心です。地方議員の実情に合った情報をお探しの方におすすめです。

【②議員当事者ならではのノウハウや実情が豊富】
連続6回当選の元県議会議長が、勝ち抜いてきたノウハウを公開しています。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対として培ったノウハウもご紹介します。

【③ 地方議員と支援者への応援情報】
官僚・国連勤務・県議経験者の筆者が、地方議員からは見えにくい「国会議員と地方議員の違い」「他国と日本の違い」をふまえて解説しています。選挙法規等は議員目線で読み解いています。議員活動を支えた妻も、人材育成業の経験を活かし、わかりやすい情報を目指して執筆に加わっています。