「決起集会」は、選挙戦略においてとても大切です。
なぜなら激戦のなかをぐっと票を伸ばして勝利のゴールを目指すときに、決起集会は大きな効果を発揮するからです。
この記事では、選挙中の決起集会(あるいは決起大会ともいいます)について、次の事項を解説しています。
どんな規模で
どんなふうに動員をすれば、最も効果があるのか。
- 【筆者について】
- 山辺美嗣、もしくは山辺美嗣の情報をもとに夫婦で執筆しています。
【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、その後県議会議員に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対としても活動した経験を基に執筆しています。現在、政治行政のコンサルタント。【やまべちかこ(山辺千賀子)】
元人材育成コンサルタント。ニュースキャスターや番組ナレーター(恩師|お茶の水博士・ベルクカッツェ)、女性組織創設運営などの活動を地方で行ってきました。議員の妻としての立場、認知症や身障等の家族(計5人)との暮らしなどで経験したノウハウもお伝えしています。夫の議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫4人。
決起集会の開催時期
決起集会の開催時期は、次のとおりです。
決起集会が早まった原因は、20年前の平成15年12月1日から実施された期日前投票制度により、選挙の様相が大きく変わったためです。
期日前投票制度により選挙戦2日目から投票出来るようになって、選挙日よりも前に有権者の1割から2割が投票するようになりました。
仮の数字ですが、最終投票率が60%として、15%の票が期日前とすると、投票総数の4分の1が期日前に出るようになったわけです。
この期日前投票に対応するために、選挙戦序盤の決起集会が始まったのです。
他方、以前同様に選挙戦最終日に決起集会を行って翌日の選挙日に大きな票をめざすなど、選挙終盤の決起集会は現在でも主流となっています。
決起集会の目的の一つは、票読みのためです。
選挙とは、当選するために必要な票数の獲得競争ですが、票が確実にとれているかどうかを選挙の途中で数えることを「票読み」といいます。
「票読み」は候補者が目指している得票数に向かって、まちがいなく進んでいることを確かめる重要なプロセスです。
候補者の話を聞くために、わざわざ時間を割いて会場に来てくれる有権者は、多少の差はあってもまちがいなく候補者に好意を持っています。
候補者の話や応援演説を聞いて、有権者が「候補者に投票しよう」と確信すると「1票」につながっていくのです。
序盤の決起集会
選挙戦初日など序盤の決起集会は、「確実な票」を期日前投票で早く獲得することがねらいです。
「確実な票」を序盤に固めると「候補者に投票してきたよ」という声が多く聞こえるようになり、間違いなく陣営に勢いが出てきます。
期日前投票を呼びかけたことにより、他の候補者よりも早く票を得ていることが分かると、その後の選挙運動にプラスに働くのです。
では「確実な票」はどこにあるのでしょうか?
- 選挙初日の街宣や電話、SNSに反応して、これまで候補者とつながりのない一般の有権者が決起集会に参加してくれるでしょうか?
- 序盤の決起集会に確実に参加してくれるのは、どんな人たちでしょうか?
選挙戦の序盤において「確実な票」になるのは、候補者と一定の人間関係ができている有権者に限られます。
後援会、同級生、同じ職場、同じサークル、同じ町内や、一族が経営している会社など
こうした「確実な票」が選挙前から確保できている候補者の場合には、序盤に決起集会を開催して期日前投票を促すことは効果的です。
終盤の決起集会
最終的に4分の3の票は選挙日に投票されているので、その票をねらった終盤の決起集会は開催時期として最も重要です。
先ほど、期日前に4分の1の票が出るようになってきていると言いました。このことは別の言い方をすると、票の過半数を超える4分の3の票が、選挙日に投票されていることを意味しているのです。
終盤の決起集会は、「候補者を大勢の人が支持している」「候補者が勝ちそうだ」とアピールして、有権者が「勝ち馬に乗る」流れを作ることがねらいです。
選挙戦が始まると一般の有権者を対象にして、昼も夜も1日何会場にもわたってきめ細かに小規模の個人演説会を重ねていきます。
こうした草の根の票の積み上げは、たとえ参加者が少なくても票読みの基礎になるとても大事な選挙戦略です。
その仕上げに開く決起集会が盛り上がると、大きな票の上積みが期待できることになります。
地盤の重なる競争相手の候補者も、同様に決起集会を開いてきますので、まさに票の奪い合い状態になります。どっちが勝ってる負けてるという風評が翌日に広がりますので、うわさでも優位に立つことが重要です。
終盤の決起集会は、陣営が総力を挙げて「一般有権者の票」を奪い合う、選挙戦の山場と言えます。
どんな戦い方をするかは、記事後半にある「規模」「動員」をご覧ください。
2回の決起集会開催は有効か?
2回の決起集会を開催するときは、次のように、目的の違いを明らかにした戦略があれば効果の高いものになります。
終盤には 「一般票」を大きく獲得する。
既に述べたように、序盤と終盤の決起集会はそれぞれ効果があるので、それぞれの狙いを明確にした戦略が重要であることを強調しておきます。
全く同じ人たちが集まる決起集会であれば、何回開催しても票は増えません。
やったという「自己満足」が得られても、成果の出ない徒労に終わってしまうでしょう。
既に大きな後援会がある候補者、親族の経営する企業がある候補者など、基礎票のある候補者であれば、決起集会を2回開催することはまちがいなくオススメです。
決起集会の規模
決起集会の会場を選ぶときは、候補者陣営の動員力よりも小さめの会場を選ぶことが重要です。
なぜなら決起集会の規模は、候補者陣営の「本当に動員できる能力(=動員力)」を上回ることは出来ないからです。
会場からあふれんばかりの大入りで初めて「勝ち戦のムード」になるでしょう。
候補者が負けるとわかっていて投票所に足を運ぶ人はいないと思わねばなりません。
ですから会場は「大入り満員」にして、「勝ち戦のムード」にすることが大原則になります。
会場の入り口は何か所あるか➡お迎えのスタッフは何チーム必要か分かる
これによって➡スタッフの手配、ジャンパーや誘導ポールの手配ができる
決起集会の動員
動員力は、世話人の数で決まります。1人の世話人の動員力は、平均するとおおよそ5人です。
例えば200人の決起集会を開くには、40人以上の世話人が一生懸命になって参加者を誘う必要があると考えてください。
決起集会の動員を担当する世話人が誰であり、全部で何人いるか明確になってはじめて、参加者を数えることができます。
世話人は誰でしょうか?
世話人をお願いできるかたは、後援会がある場合には地域ごとに世話人が決まっていたりしますが、そうでない場合には選挙のために世話人をお願いすることになります。
できるだけ早くから、多くの方に世話人を引き受けていただくお願いを始めることが大切です。
また、人によって動員力が異なるのは事実ですが、私の経験からは1人当たり5人程度が平均です。10人もの人に間違いなく参加を頼める人は、まずいないものです。
会社の社長をしているからといって、決起集会への参加を業務命令ですることは法令に違反しますので、地位のある人が必ずしも動員力があるとは言えません。
選挙違反しないための注意事項
決起集会の開催日時と会場が決まりました。では、事前にどのようにして告知するかを考えてみましょう。
ポスター 〇 選挙ビラ 〇
選挙公報 〇 新聞広告 〇
この場合、それぞれ印刷の締め切りがあるので、それよりも早い段階で決起集会の日時場所を決定している必要があります。
また、告知文が掲載されているだけでは、読んだ人が決起集会に参加するかどうかが確実ではありません。やはり、世話人の方が直接に知り合いを誘うことが大切です。
「文書」での告知は違反になる。✖
SNSで伝える 〇
電話で伝える 〇
口コミでの告知は?
知り合いを訪ねたり、外出先や仕事で出会ったときに伝えるのは「個々面接なので」違反しない 〇
知らないお宅を連続して訪ねて伝えるのは「戸別訪問になり」違反になる ✖
(※)「個々面接」や「戸別訪問」など、選挙運動で出来ること、してはいけないことについて別の記事があります。カテゴリーの「選挙>選挙違反」でご覧いただけます。
世話人は、SNS、電話、個々面接で、知り合いの方に決起集会のお知らせをして、参加する約束をもらってください。
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