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【選挙事務所】選挙参謀と選挙スタッフの役割 |選挙戦略のかなめ、当落に直結【勝ち抜いてきた県議会議長OBのノウハウ】

選挙はチーム戦です。
候補者一人の力で当選できる候補者はいない、といっても過言ではないでしょう。

特に地方議員選挙は、熾烈になる傾向があります。
本気で一緒に汗を流してくださる人の力が無くては、当選は目指せません。

前評判のよい候補者が落選することがありますが、チーム力が足りなかったと言わざるを得ません。
選挙戦略のかなめ、当落に直結するのが、選挙参謀や選挙スタッフなのです。

以下は、当選を叶える重要な役割を果たしていただいている人たちの例です。


総括責任者・幹事長・事務長・出納責任者
選挙カー担当・個人演説担当・電話作戦担当など

勝ち抜いている選挙陣営は、どんな人が、どんな役割を果たしているのか、その具体例をご紹介します。

 

この記事を読むとわかること

  1. 選挙参謀や選挙スタッフの具体的な役割
  2. 連座制に細心の注意が必要であること

本記事は、候補者と支援者の方が対象です

【筆者/やまべみつぐ】について
【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。

目次から必要個所だけご覧いただく事ができます。

選挙参謀と、選挙スタッフは、どんな人たち?

選挙事務所を運営するのは、次のような人たちです。

【総括責任者】 選挙事務所の代表者で選挙全体に責任をもつ
【幹 事 長】 選挙の戦略と戦術の実行を指揮する
【事 務 長】 外部との事務関係すべてを仕切る
【出納責任者】 選挙資金の収入と支出のすべてについて責任をもつ
【選挙カー担当者】  運行計画作成、ウグイスなど車上運動員の指導
【個人演説会担当者】 開催計画作成、会場設営、会場運営、会場撤収
【電話作戦担当者】  原稿作成、話し方指導、反応の把握
参謀やスタッフの名称は陣営によって異なり、決まったルールはないので、この記事では比較的よく使われている名称にしていることをご理解ください。
参謀とスタッフは、事務所開きよりもかなり早めに選任して、選挙対策にとりかかるのが一般的です。
なぜなら、それぞれの業務には補助者として、事務員、運動員、労務者などが必要ですが、その手配には時間がかかるからです。

 

選挙参謀と、選挙スタッフが、決まるまで

候補者はどのようにして選挙参謀を見つけるのですか?

候補者は立候補を決意するまでに、公私にわたって関係の深い人たちに相談します。その際に「親身になって相談に乗ってくれた人」や「立候補することに強く賛同してくれた人」「応援を約束してくれた人」などに候補者がお願いして、選挙参謀を引き受けていただくケースをよく見てきました。

また、候補者の後援会があるときは、候補者は後援会の役員と一緒になって探し、後援会会員を含め適任者に選挙参謀をお願しています。

 

選挙スタッフはどのようにお願いするのですか?

選挙スタッフは、選挙事務所に常駐するため、お休みをとれる人でないと務まりません。参謀に就いていただいた方から適任者を紹介していただいたり、候補者が友人にお願いしたり、後援会から推薦のあった人など、人を介してお願いして業務を納得してもらって、選挙スタッフなってもらうのが通例です。

 

 

おおまかなイメージが出来たと思いますので、個々具体的に業務の内容を説明しましょう。

選挙参謀の、具体的な業務とは

選挙参謀はつぎの4人の方たちです。

  1. 総括責任者: 選挙事務所の代表者で選挙全体に責任をもつ
  2. 幹 事 長: 選挙の戦略と戦術の実行を指揮する
  3. 事 務 長: 外部との事務関係すべてを仕切る
  4. 出納責任者: 選挙資金の収入と支出のすべてについて責任をもつ

 

 

がんばる君
の業務の違いが分かりにくいのですが…
やまさん
の総括責任者は、候補者に代わって来賓の接遇やマスコミ対応など「外交」を担当するんだよ
がんばる君
なるほど!わかりました。じゃあ
の幹事長は、選挙事務所内部に指示を出す「内政」を担当するんですね
やまさん
そのとおり!
がんばるくんは呑み込みが早いですね
では、選挙参謀について個々に業務を説明しましょう。

総括責任者

総括責任者のことを以前は、見栄えの良い飾り物という意味で「選挙のシャッポ」と呼んで、元首長や元議員など地位のある人にお願いしていた時代がありました。

しかし現代はイメージ選挙の時代となり、マスコミに流れる選挙事務所の映像も重要になってきています.

総括責任者は、候補者に代わって選挙事務所を訪れる外部の人たちに対応しますので、来訪客が感じる事務所の雰囲気は、総括責任者のイメージと重なってきます。

 

総括責任者は選挙事務所のスポークスマンであり「明るく爽やかで信頼できる印象」が求められるのではないでしょうか。

 

候補者が参謀にしたい人の中から、最も「人当たりがよく誠実な話し方をされる人」にお願いして、総括責任者に就任してもらうのがよいでしょう。

選挙告示日、選挙中盤、投票日などに、マスコミは選挙事務所に取材をかけてきます。

総括責任者が爽やかな対応を一貫しておこなうことで、候補者が順調に選挙戦を進めているイメージを広めることができるでしょう。

 

総括責任者の役割は、支持者に不安を与えず、候補者は強いというイメージを維持することで、陣営に勝利をもたらすことです。
がんばる君
総括責任者のコメントがそのまま新聞に記載されることもあるってことですね。となると、前向きな言葉を使うのが上手な人がよさそうですね。
やまさん
そのとおりですね。不安は陣営を浮足立たせ、選挙運動が空回りしだすので、総括責任者には前向きな言葉が大切です。

幹事長

幹事長は選挙事務所内のスタッフに号令を出す「指揮官」です。

幹事長は正しい指示出しが求められますが、そのためには現実を見るリアリストの目を持つ人が適任だと言えます。

幹事長は、候補者日程、選挙カー運行、個人演説会、支援者宅訪問、支援企業訪問などが「連携しかみ合っていく」ように配慮することが最重要の業務です。

幹事長は、常に情報を入れて即時に指示を出す必要があります。
そのためには、副幹事長として2名程度の補佐役がいてくれると随分と負荷が軽減されるでしょう。

今日の選挙では、事務所のインターネット環境は必須であり、来訪客にもその場でインターネットにより候補者に対する投票を頼んでいただくような戦術も行われています。

インターネット選挙は新しく始まった選挙ルールです。ホームページは選挙中は固定する、メールによる選挙運動は一部制限される、SNSによる選挙運動に制限はないなど、複雑な決まりがあります。

そこで、インターネット選挙を熟知している人を副幹事長の一人にするなどの工夫をしている陣営もあります。

幹事長は毎日、その日の最後の個人演説会が終わってから、参謀とスタッフを集めます。
本日の報告と明日の予定を確認して、その日のうちに改善の指示出しをすることが、最善の日課だとはよく聞く言葉です。
幹事長がその時間帯に不在の時には、事務長や副幹事長が進行役を行うこともできますが、いずれにしても毎日激務が続く業務です。
がんばる君
参謀の中核は、この幹事長ってことですね。
やまさん
幹事長、選対本部長、など、呼び方はさまざまですが、選挙スタッフへの指示出しを行う役割です。人一倍あたまを使い、人間関係にも骨を折っていただくことになります。

 

事務長

事務長には膨大な業務量があります。

事務長は、候補者に代わって選挙管理委員会に書類を提出しますが、その数は何十にも及びます。

事務長の業務は、立候補届、立会人の選任、運転手届、選挙公報原稿、ポスター、選挙ビラ、選挙ハガキのなどを企画作成し、事前審査にはじまり、告示日に届け出、選挙中の変更や追加の届出など、事務の全てに及びます。

事務長はどんな人にお願いするのがいいのか。どんな人が引き受けてくれるか。選挙には絶対欠かせない役割なので、事務長の選任は実務では最大の課題です。

事務長については、公文書の作成に精通している人を見つけ出すことから始まります。
また引き受けてもらうためには、補助者をつける約束も必要になります。
このようにして、ようやく引き受けてもらえるくらいハードな業務なので、選任は早めに動き出す必要があるでしょう。

一度事務長の補佐役を経験した人が、将来事務長を担うようになるといわれるのは、経験を積んで自信をつけることが大切なことを表しているといえます。

 

出納責任者

出納責任者の業務は、選挙告示のかなり前から始まります。

選挙準備の中でも大がかりなものは、契約段階から大きな金額を決定するので、出納責任者が関係します。選挙事務所の場所を決める、選挙カーの手配をする、選挙事務所看板を発注する、備品のレンタルを予約するといった段階から関係します。

また、選挙管理委員会に提出する収支報告書は、選挙が終わってからも最後の支払いが終了するまで、何回かに分けて作成しますので、業務はかなり長期にわたります。

必要経費を見積もり、選挙資金調達が十分か常に検討して、資金が不足しているときは選挙献金を求めたり、候補者の自己負担を求めることもありますので、神経を使う仕事です。

出納責任者は、選挙管理委員会に提出した収支報告書に、ミスがあればあとから訂正できます。
しかし、不正に記載したことが明らかになった場合には、出納責任者は処罰を受け、候補者が連座して※当選無効となりますので、緊張を強いられる業務でもあります。
連座制については後半に説明しています。

一般に選挙違反とは、買収などの「有権者に対する不正行為」を指すのですが、選挙管理委員会に出す収支報告書という「公文書の不正」が選挙違反に問われるのは、参謀の中でも出納責任者だけです。

それは出納責任者が、選挙のお金について最終的な責任を持つ、重要な役割を果たしているからです。

出納責任者を補助する人は誰でもよいわけでなく、出納責任者が指名して信頼できる部下などが就くケースが多く見られます。

 

選挙スタッフの具体的な業務とは

選挙スタッフは、それぞれの現場を持っています。

それらの現場に関して、

▶実施方針や計画に変更を加えたいときは幹事長の了解を得て、
▶ 外部に書類の提出が必要になれば事務長の了解を得て、
▶ 金銭の支払いが生じれば出納責任者の了解を得て、

選挙スタッフは案件を担当する参謀に相談して、了解を得てから実行します。

 

やまさん

わかりやすく言えば、選挙スタッフとは「現場監督」の業務ですね

がんばる君
なーるほど!

では、選挙スタッフについて個々に業務を説明しましょう。

 

選挙カー担当者

選挙カー担当者の業務について説明します。

選挙前に「選挙カーの発注」と「車上運動員の確保」から業務が始まります。
選挙カーの運行が得票に結びつくよう、期間中の運行計画を策定しますが、日々見直しされていきます。車上運動員(ウグイスなど)の指導も事前に行います。

選挙期間中は早朝から夜まで、選挙カーの運行と候補者の動きが連携するように目を光らせます。
なぜなら候補者が屋外で使える音響機器は1つに限定されるので、街頭演説には選挙カーとの合流が必要だからです。

運転手とウグイスなどの車上運動員は激務なので健康管理に気を配ることも重要な業務です。

 

選挙カーには決まりがあるのですか?

選挙カーの運行にあたって、次のような非公式のルールがります。
〇「学校、保育園、病院などの近所は音を出さない」
〇「住宅地は音のレベルを下げる」
〇「流しでの運行は、名前の連呼を中心にする」
〇「流しでは演説しないこと。演説は、停車しての街頭演説で」

いろいろ制約があるのですが、それでも選挙カーが必要なのは「選挙が始まっていること、候補者が出馬していることを、有権者に知らせて関心を持ってもらい投票につなげるため」です。

 

 

個人演説会担当者

個人演説会担当者の業務について説明します。

個人演説会は選挙運動の中で重要な役割を担います。候補者が自分の選挙公約や政策を有権者に理解してもらって得票に結びつける大切な機会となるためです。

個人演説会担当者は、選挙期間中の開催計画作成して選挙告示前には会場を確保します。
毎日の会場設営、会場運営、会場撤収にかなりの数の協力者に指示を出すことや、電話作戦担当者と連携して、個人演説会の前触れ電話をお願いすることも業務です。

個人演説会では、どんな人が応援弁士で、どんな挨拶をするのかにも有権者の関心が集まります。
会場ごとに応援弁士をそろえる必要があります。

 

応援弁士の手配にあたって、弁士にお願いすることは?

応援弁士にお願いすることは2つです。
① 時間の指定。「〇分でお願いします」と具体的に分数を指定します。
② 挨拶のなかに「候補者のよいところを具体的なエピソードで紹介してほしい」とお願いします。

特に②については、事前に電話をかけてお願いすると応援弁士がエピソードを考えてくれますので、良い話が聞けるでしょう。

 

 

電話作戦担当者

電話作戦担当者の業務について説明します。

固定電話の利用が少なくなったとはいえ、投票率の上位を占める中高年世帯では固定電話は引き続き選挙に有効な手段です。何よりも、NTT電話帳が公開されているので活用することができます。

電話作戦担当者は、NTT電話帳に加えて各種の名簿を支援者から集め、電話作戦のボランティアを確保し、原稿作成と話し方指導をして、準備を進めます。

 

電話作戦にはどんな効果があるのですか?

電話作戦の効果は次のように考えられます。
① あまり外出しない人に対しても選挙運動ができる。
② 個人演説会開催の告知をして、会場の案内ができる。
③ 期日前投票の案内をして、候補者への投票をお願いできる。
④ 電話への応答から、候補者に対する反応を読み取ることができる。

なお、SNSの活用を中心にインターネット選挙が行われていますが、その司令塔に電話作戦担当者が併任で就いているケースもあるようです。電話とネットの両方の反応を分析して、選挙戦術に活かすことができそうですね。

 

重要! 連座制には細心の注意を

候補者本人が公職選挙法に違反した場合、当選は無効になります。

これに加えて公職選挙法には、候補者以外の違反でも候補者の当選が無効になる「連座制」が定められているのです。

選挙運動の全体を総括主宰する人、あるいは、候補者と意思を通じて組織により行われる選挙運動を管理する人が、公職選挙法に違反した場合、候補者の当選が無効になる」

(公職選挙法第241条の一部を要約)

 

選挙参謀や選挙スタッフは、連座制の規定に当てはまる可能性が十分あります。

したがって、選挙参謀や選挙スタッフは自らが法律に違反することのないよう、また他者に法律違反となる行為を指示することも違反にあたるので、法律を熟知して細心の注意を払うことが求められます。

このほか、候補者の親族や秘書は連座制の対象です。

なお、候補者と日常において緊密な関係がある人であっても、選挙に関して上記の公職選挙法に示されるような関係にない場合には、連座制の対象とはなりません。

 

違反を出さない

違反を出さないよう指導をすることは、選挙参謀や選挙スタッフに限定されたことではありません。選挙事務所全体に関わる重要なテーマとして、選挙が始まる前から、選挙中においても、折に触れて選挙事務所内で説明を繰り返すことが大事です。

選挙違反については、戸別訪問、買収、食事の饗応、差し入れ、陣中見舞いなどについて、具体的に違反になる場合と違反にならない場合の両方を説明することが重要です。

選挙違反の処罰は、罰金刑だけでなく公民権停止という厳罰もあるので、知らないで違反してしまったということがないようにしたいものです。

 

まとめ

この記事で、以下のことが理解いただけたと思います。

  1. 選挙では参謀やスタッフが候補者を支えている
  2. 参謀やスタッフは極めて重要な業務を担う
  3. 連座制に細心の注意が必要である

 

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