本記事は、応援演説を依頼された支援者の方向けです。
選挙の応援演説を頼まれたものの、
「何を話せばよいのだろう」
「うまく話せる自信がない」
と困っている方もいらっしゃるでしょう。
応援演説で大切なのは、華やかな言葉を並べることではありません。
自分がその候補者をなぜ応援しているのか、実際に見聞きしたことをもとに、誠実に伝えることです。
この記事では、応援演説の基本的な構成と、話す内容を考える際の注意点を取り上げます。
この記事を読むとわかること
・応援演説の基本的な構成
・候補者のエピソードを選ぶ考え方
・短く話すための組み立て方
・応援演説で避けたい内容
・選挙運動期間に関する注意点
公共政策コンサルタント
◆山辺の3つの視点◆
①国の行政視点:経済産業省(旧通産省)で培った視点
②国際機関の視点:国連勤務経験を生かした視点
③地方の視点:県議会議員時代の現場重視の視点
山辺は県議時代の2000年に、「地産地消政策」を、全国初で実現した。
応援演説の役割とは
応援演説は、候補者をただ褒めるためのものではありません。
候補者と関わってきた人が、自分の目で見た人柄や仕事への姿勢を伝えることで、聴衆が候補者を知る一つの機会になります。
そのため、立派に聞こえる話を作ろうとするよりも、
「私は、このような場面で候補者の姿を見ました」
と、自分が知っている事実を話すほうが伝わりやすいでしょう。
候補者本人が語る自己紹介や政策とは異なり、第三者だからこそ話せることがあります。
ただし、応援する気持ちが強いあまり、実績や人物像を大きく見せすぎないよう注意が必要です。
応援演説の基本的な構成
応援演説は、次の四つを軸にすると組み立てやすくなります。
1.自己紹介
まずは、自分の名前と候補者との関係を簡潔に伝えます。
たとえば、
「私は〇〇さんと、地域活動を通じて知り合いました」
「〇〇さんとは、仕事で長くご一緒してきました」
といった程度でも、候補者との関係は伝わります。
自分の経歴を詳しく説明しすぎると、誰のための演説なのかがわかりにくくなります。
必要な情報だけに絞ることが大切です。
2.候補者との関係
いつ、どのような場面で候補者と知り合ったのかを伝えます。
同級生、仕事仲間、地域活動の仲間など、関係は人によってさまざまです。
大切なのは、肩書の立派さではありません。
候補者をどのような立場から見てきたのかがわかれば、その後に話すエピソードにも説得力が生まれます。
3.実際に見聞きしたエピソード
候補者の人柄や姿勢が伝わる出来事を、一つ選びます。
多くの話を盛り込むよりも、印象に残っている場面を丁寧に話すほうが、聴衆にも伝わりやすいものです。
たとえば、
・困っている人の話を最後まで聞いていた
・地域の課題について地道に調べていた
・難しい仕事から逃げずに取り組んでいた
・目立たない場面でも周囲を支えていた
など、自分が実際に見た姿を振り返ってみましょう。
伝聞だけの話や、事実を確認できない実績は避けます。
4.候補者への期待
エピソードを紹介した後は、その姿勢を政治や地域のためにどう生かしてほしいのかを述べます。
たとえば、
「人の話を丁寧に聞く姿勢を、地域の課題解決にも生かしてほしいと思っています」
「難しい問題にも粘り強く向き合う人だからこそ、地域の将来を託したいと考えています」
という形です。
候補者の政策や公約に触れる場合は、本人が実際に掲げている内容と食い違わないよう、事前に確認しておきましょう。
エピソードは一つで十分
応援演説を任されると、候補者のよいところをできるだけ多く伝えたくなるものです。
しかし、エピソードをいくつも並べると、一つひとつの印象が薄くなってしまうことがあります。
話すことに慣れていない方ほど、まずは一つに絞ると安心です。
選ぶ基準は、「自分だから話せること」です。
候補者の経歴や政策は、パンフレットや本人の演説でも知ることができます。
一方で、
「あのとき、候補者はどのように行動したか」
「周囲の人にどう接していたか」
という話は、その場にいた人にしかできません。
ただし、候補者に対する好意的な評価と、客観的な事実は分けて話しましょう。
「地域の経済を発展させた」「多くの問題を解決した」などと成果を断定する場合には、裏づけが必要です。
確認できない場合は、
「私は、その姿勢を頼もしく感じました」
「地域のためにも力を発揮してほしいと思っています」
と、自分の感想や期待として伝えるほうが自然です。
短く話すための組み立て例
応援演説は、次のように短く組み立てることもできます。
「私は〇〇さんと、地域活動を通じて知り合いました。
活動の中で印象に残っているのは、〇〇という出来事です。
そのときの姿から、〇〇さんは、人の話を聞き、最後まで責任をもって取り組む人だと感じました。
私は、その姿勢を地域のためにも生かしてほしいと願っています」
この文章をそのまま使う必要はありません。
候補者との関係、実際の出来事、自分が感じたことを当てはめながら、自分の話しやすい言葉に整えてください。
応援演説で避けたい内容
応援演説では、次のような内容に注意します。
長すぎる自己紹介
応援する人の経歴が長く続くと、候補者の印象が薄くなります。
自己紹介は、候補者との関係がわかる範囲にとどめましょう。
根拠のない称賛
「誰よりも優れている」「必ず地域を変えてくれる」など、根拠を示しにくい表現を重ねても、かえって大げさに聞こえることがあります。
実際に見たことと、自分が感じたことを中心に話します。
他の候補者への批判
応援する候補者の魅力を伝えるために、他の候補者を悪く言う必要はありません。
批判や比較ではなく、応援する理由そのものを語るほうが、演説の印象も穏やかになります。
確認していない経歴や実績
候補者について話す数字、役職、実績などは、事前に確認しておきます。
悪意がなくても、誤った内容を公の場で話せば、候補者にも迷惑をかけかねません。
候補者と異なる政策の説明
自分の考えを候補者の公約であるかのように話さないことも重要です。
政策に触れる場合は、選挙公報や正式な政策資料などで確認し、候補者側とも認識を合わせておきましょう。
応援演説をする時期にも注意する
応援演説の内容を考えるときは、演説を行う時期にも注意が必要です。
公職選挙法上の「選挙運動」は、特定の選挙で、特定の候補者を当選させることを目的として投票を得るために行う活動を指します。
選挙運動ができるのは、原則として、立候補の届出が受理されてから投票日の前日までです。
そのため、告示日や公示日より前に、
「〇〇さんに投票してください」
と働きかけることは、事前運動と判断される可能性があります。
一方で、告示前でも、政策を知らせることや政治活動そのものが、すべて禁止されているわけではありません。
ただし、政治活動という名称であっても、時期、場所、内容、方法などから、実質的に特定の選挙での投票を求める活動と判断されることがあります。
告示前の集会などで応援演説を依頼された場合は、
・どのような目的の集会なのか
・候補者をどのように紹介するのか
・投票を求める内容になっていないか
を、主催者や候補者側と事前に確認しておくことが大切です。
告示後であっても、選挙運動には方法や時間、場所などにさまざまな規制があります。
判断に迷う場合は、自己判断で進めず、管轄の選挙管理委員会などに確認してください。
原稿を作る前に候補者側と確認したいこと
応援演説の原稿を書き始める前に、候補者や選挙事務所と次の点を確認しておくと安心です。
持ち時間
応援演説の時間は、会場や進行によって異なります。
長い原稿を用意しても、当日に時間を短縮されることがあります。
あらかじめ持ち時間を確認し、少し短めに収まるよう整えておきましょう。
集会の目的と聴衆
事務所開き、出陣式、個人演説会、決起大会など、応援演説を行う場面はさまざまです。
集会の目的や全体の流れがわかれば、自分に求められている役割も見えやすくなります。
ただし、聴衆に合わせて話を作り変えすぎる必要はありません。
誰が聞いても事実と受け取れる、誠実な内容を基本にしましょう。
候補者の正式な政策
地域の課題や政策に触れる場合は、候補者が正式に発表している内容を確認します。
自分が候補者に期待していることと、候補者本人が掲げている政策は、必ずしも同じとは限りません。
原稿を候補者側に事前に見てもらう方法もあります。
候補者名や経歴の読み方
名前、肩書、経歴、地名などは、読み方も含めて確認します。
小さな間違いでも、公の場では目立ってしまいます。
特に数字や固有名詞は、原稿に書き込んでおくと安心です。
原稿は話し言葉で作る
応援演説の原稿は、目で読む文章ではなく、耳で聞く文章です。
一文を短くし、難しい言葉を減らすと、聞き取りやすくなります。
たとえば、
「〇〇さんは、地域の諸課題に対して幅広い見識を有しています」
という文章よりも、
「〇〇さんは、地域の問題をよく調べています。そして、人の話を丁寧に聞く人です」
と区切るほうが、話しやすく伝わりやすいでしょう。
完成したら、必ず声に出して読んでみてください。
読みにくい箇所は、聞く側にとってもわかりにくい可能性があります。
言葉に詰まりやすい部分や、一息で読めない長い文章は、短く整えます。
原稿どおりに話せなくても問題ありません
本番では、緊張して言葉を忘れることもあります。
すべてを暗記しようとすると、かえって不安が大きくなるかもしれません。
最低限、次の三つを覚えておけば、話の筋道は保ちやすくなります。
1.自分と候補者との関係
2.伝えたい一つのエピソード
3.候補者に期待していること
原稿を手元に置いて読んでも構いません。
上手に見せることよりも、事実を間違えず、自分の言葉で丁寧に伝えることを優先しましょう。
まとめ
応援演説を頼まれたら、候補者を大きく見せるための言葉を探す必要はありません。
基本となるのは、次の四つです。
1.簡潔な自己紹介
2.候補者との関係
3.実際に見聞きしたエピソード
4.候補者への期待
エピソードは、一つでも十分です。
根拠のない称賛や、確認していない実績、他候補への批判は避けましょう。
また、告示前と告示後では、話せる内容や活動の扱いが異なります。
特に投票を求める表現については、演説を行う時期や場面を確認することが欠かせません。
応援演説で人の心に残るのは、必ずしも流暢な話し方ではありません。
その候補者を実際に見てきた人が、なぜ応援しているのかを誠実に語ること。
それが、応援演説の大切な役割ではないでしょうか。
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