選挙告示前の挨拶回りは、市町村議会議員や都道府県議会議員を目指す立候補予定者にとって非常に重要な活動です。選挙前に自分の顔と名前、さらには思いを有権者に知ってもらうことは、政治家をめざす第一歩となるでしょう。
選挙告示前の期間には、「できること」と「やってはいけないこと」が明確に定められています。たとえば、戸別訪問は告示前に特定の制限がありますが、適切に行えば選挙前の有効なアプローチとなります。
この記事では、告示前におこなうと違反となる事前運動の事例や、SNS問等を利用した活動なども含めて、挨拶回りの効果的な戦略を詳しく解説します。
選挙告示前の挨拶回りの重要性をよく認識したうえで、避けなくてはならない違反行為など注意ポイントを理解して、効果的な選挙告示前の挨拶回りを進めてください。
- 【筆者/やまべみつぐ】について
- 【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。
【重要性】選挙告示前の挨拶回り
選挙告示前にできること
告示前に選挙に向けて行う活動には、公職選挙法が選挙の事前運動を禁止しているのでいくつかの制限がありますが、憲法が国民の権利として保証している「政治活動」としてできることもたくさんあります。
できることは次のとおりです。
政策説明会
まず、政策や理念を広めるために、「〇〇さんを囲む会」などの名称で政策説明会を開くことができます。この活動は、有権者に自分の政策を知ってもらい、支持を集めるために重要です。さらにこうした会では、政策を記述したビラを「討議資料」として使用することともできます。
SNS等
また、SNSやホームページを利用して、自分の考えや活動を発信することも可能です。
後援会
さらに、多くの立候補予定者は、自分の政治活動を応援してくれる人を増やすために後援会を設立します。
挨拶回り
そして、これらの政治活動を通じて、告示後の選挙運動に向けて地盤を固めることができます。
選挙前に挨拶回りする効果
選挙前に挨拶回りをすることには大きな効果があります。
立候補予定であることを述べることや投票依頼は選挙の事前運動にあたるので行ってはいけませんが、
「地域の課題に取り組んでいきたい」という政治的な決意を述べることは選挙前に出来るので、思いを込めてメッセージを届け政治活動への応援をお願いしましょう。
こうして直接有権者と対話することで、自分の政策や考えを伝えることができます。また、有権者の意見や要望を聞くことで、より現実的な政策を考えるきっかけになります。
さらに、顔と名前を覚えてもらうことで、選挙前におこなう種々の政治活動に参加してもらいやすくなります。
ただし、挨拶回りは体力や時間を要する活動ですので、計画的に行うことが重要です。適切な挨拶回りを行うことで、選挙戦における大きなアドバンテージを得ることができます。
挨拶回りは立候補予定者が有権者一人一人との「人間関係」を築くことが目的です。人間関係が緊密な順序はつぎの通りなので、1から順に優先するべきでしょう。
1「家族関係」(血縁)
2「親戚関係」(血縁)
3「同級生・先輩・後輩関係」(地縁)
4「近所と地縁関係」(地縁)
5「その他の個人的な信頼関係」(個人的縁)
6「商工会・JC・消防団・赤十字奉仕団・青年団などの仲間」(団体の仲間)
7「ボランティア仲間・宗教信者仲間・趣味仲間・スポーツなどの仲間」(団体の仲間)
挨拶回りに必要なグッズとしては「名刺」のほかに、リーフレットを「討議資料」として使うことが多いのですが、これらについてもいろんな工夫で効果を高めることができます。グッズを整えながら挨拶回りの計画を立て、その後に挨拶回りを実行することが大切です。
SNSを活用した選挙告示前のアプローチ
SNSを活用することで、自宅や会社を訪ねなくても有権者にアプローチすることが可能です。
たとえば、X(旧Twitter)やFacebookを使って自分の政策や活動を発信することができます。この方法は、多くの人にリーチすることができ、コストも抑えられるため効果的です。また、インスタグラムやYouTubeを利用して、写真や動画を通じて視覚的に訴えかけることもできます。さらに、オンライン上での質問や意見交換を行うことで、有権者とのコミュニケーションを深めることも可能です。
ただし、SNSは誰もが見ることができるので利用する際には特に、
「選挙の事前運動」との誤解を招かないように「政治活動」として正確な情報を発信することが重要です。
挨拶回りやSNSでは「〇〇議員選挙」「候補者の△△」「投票のお願い」といった情報は発信してはいけないんですよ
選挙の事前にできるその他の活動事例
選挙の事前にできる活動はこれまで述べてきた、挨拶回り、SNSの活用、政策説明会の開催、後援会の設立などの外にもさまざまあります。
その他に出来ることは次のとおりです。
街頭活動
例えば、選挙区内での街頭活動が挙げられます。勤務地が遠方にある方などに挨拶する機会はなかなか無いものです。その場合に行うのが、通勤時間帯に駅などで行う街頭活動です。
この場合、マイクでの挨拶よりも政策を記述したビラを「討議資料」として用意して、手渡しに集中することは大いに効果があります。手渡しは有権者に接近して行いますので、会話ができれば親密感が増します。また、有権者から質問があればそれに答えることで、信頼を築くことも可能です。
地域行事
さらに、地域のイベントや祭りに参加して地域住民との交流を深めることも効果的であり、有権者に身近なひとのイメージを築くことができます。
【注意ポイント】選挙告示前の挨拶回り
選挙告示前にやってはいけないことの事例
選挙事前運動には、法律で定められた禁止行為があります。
X 投票依頼
たとえば、選挙期間前に特定の候補者への投票を依頼することは、選挙事前運動とみなされ禁止されています。また、特定の候補者を支持する内容を含む文書や図画を、選挙告示前に配布することも禁止されています。
X 飲食、寄付
このほか、選挙に関連して飲食物を提供する行為や、選挙区内の住民に対して金銭や物品を寄付する行為も禁止されています。
これらの行為を行うと、選挙違反となり、罰則が科されることがあります。
法律で禁止される選挙事前運動を理解
法律で禁止される選挙事前運動を理解することは、適切な政治活動を行うために極めて重要です。なぜなら法律に違反すると、すべての努力が無に帰してしまうからです。
先ず選挙運動期間前には、公職の候補者やその支持者が選挙区内で行うあらゆる形式の選挙運動が禁止されています。また、インターネットを利用した選挙運動も、例えば選挙運動期間に入るとホームページの更新が禁止される、電子メールの使用が制限されるなど詳細な規制があります。さらに、選挙運動期間中では選挙運動用の自動車を使った選挙運動や、選挙ポスターの掲示などには、多くの制限があります。
立候補予定者や支持者は、法律で定められた禁止行為の理解を十分に深めて、公正に政治活動と選挙運動を行うことが、建前にとどまらず現実に重要なのです。
選挙告示前の戸別訪問はしてよいのか
候補者や支持者が選挙区内の住宅や事務所を訪問して投票を依頼する「戸別訪問」は禁止されています。しかし法律には何が戸別訪問に当たるのか具体的に記述されていません。過去の公職選挙法違反の裁判判決事例から、推測するしかないのです。
選挙告示前においても、選挙事前運動に当たる戸別訪問は禁止されています。ただし、判例から見ると次のような場合、住宅や事務所を訪ねて挨拶回りをすることは可能です。
- 1.政治活動の挨拶に訪問したことが明らかな場合(例えば、政策説明会開催の挨拶や、後援会設立の挨拶などのための訪問)
2.支持者であることが明らかな場合(例えば、後援会加入申込者や、後援会会員、政治活動の支援者の訪問)
3.政策を記述した討議資料の配布のために訪問する場合(例えば、ポスティングに訪れたが姿が見えたので声をかけ挨拶したなど)
ただし、選挙に関連する内容が話題になり訪問先の有権者が選挙事前運動と受け止めた場合には、司法においても違反とみなされる可能性があるため言葉遣いには注意が必要です。
挨拶回りで伝えるべきメッセージの工夫
挨拶回りで伝えるメッセージは、有権者の心に残るよう工夫することが重要です。「伝えたいメッセージを自分の言葉で」挨拶してください。
簡潔さ
まず、自分の政策やビジョンを簡潔にまとめたメッセージを用意しましょう。
有権者の関心事
また、有権者の関心事や地域の課題に対する自分の考えを伝えることで、関心を引くことができます。
笑顔
さらに、個々の有権者に対しては、親しみやすさを感じてもらえるように、笑顔で挨拶し、相手の目を見て話すことが大切です。
有権者との対話を大切にし、信頼関係を築こうとする姿勢が、効果的なメッセージ伝達につながります。
まとめ|選挙告示前の挨拶回り
挨拶回りにより、政策や考えを直接有権者に伝えられる
挨拶回りで顔と名前を覚えてもらい、選挙当日に投票してもらいやすくなる
挨拶回りには名刺やリーフレットを討議資料として用意する