「公務員に選挙の応援をお願いしてはいけない」
このように考えている方は、少なくないかもしれません。
ただし、法律上は、公務員による選挙の応援がすべて一律に禁止されているわけではありません。
一方で、公務員という立場や職務上の影響力を利用した選挙運動は、厳しく制限されています。
また、国家公務員と地方公務員では適用される規定が異なり、教員や民生委員にも、それぞれ注意すべき法律があります。
そのため、地方議員や候補者が公務員に選挙の応援を求めるときは、
「公務員だから絶対に頼めない」
「勤務時間外なら自由に頼める」
と単純に判断するのは避けたほうがよいでしょう。
この記事では、具体的な選挙運動の方法には踏み込まず、公務員、教員、民生委員に関係する基本的な注意点を取り上げます。
公共政策コンサルタント
◆山辺の3つの視点◆
①国の行政視点:経済産業省(旧通産省)で培った視点
②国際機関の視点:国連勤務経験を生かした視点
③地方の視点:県議会議員時代の現場重視の視点
山辺は県議時代の2000年に、「地産地消政策」を、全国初で実現した。
公務員の選挙応援はすべて禁止されているのか
公職選挙法では、公務員がその地位を利用して選挙運動をすることを禁止しています。
ここで重要なのは、禁止の対象が単に「公務員が選挙に関わること」ではなく、公務員としての地位を利用することだという点です。
たとえば、職務上の権限や人間関係、部下や関係者に対する影響力などを背景に、特定の候補者を応援させようとすれば、問題となる可能性があります。
候補者や現職議員の側から働きかけた場合も、相手の立場を危うくするおそれがあります。
なお、公務員には、公職選挙法だけでなく、国家公務員法、地方公務員法、人事院規則、勤務先の服務規程などが関係します。
一般職の国家公務員については、国家公務員法第102条と人事院規則14―7により、一定の政治的行為が禁止または制限されています。人事院も選挙の際、政治的中立を保つため、規定を守るよう各府省庁に通知しています。
地方公務員についても、地方公務員法による政治的行為の制限があります。ただし、職種や所属、公務員の種類によって適用関係が異なるため、「公務員なら全員同じ」とは考えられません。
「勤務時間外なら大丈夫」とは限らない
公務員に対する政治的行為の制限は、勤務時間外や休暇中であれば当然に適用されなくなるものではありません。
しかし、勤務時間外であれば、どのような応援でも自由にできるとは限りません。
肩書や職場での立場を前面に出していないか、職務上知り得た情報を利用していないか、部下や行政の関係者に影響を与えていないかなど、行為全体から判断されます。
候補者側としては、法律の範囲を自分に都合よく解釈するのではなく、まず相手の職務と生活を守る姿勢が大切です。
教員・教育者には特別な注意が必要
公職選挙法では、学校の長や教員が、教育上の地位を利用して選挙運動をすることを禁止しています。
教員としての信用や、児童・生徒、保護者などとの関係を選挙に利用することは許されません。
さらに、公立学校の教育公務員には、教育公務員特例法により、政治的行為について国家公務員に準じた制限が設けられています。
ここでも、「教員は選挙を一切応援できない」と単純化するのは適切ではありません。
しかし、教育の場には、児童・生徒や保護者に対する大きな影響力があります。
地方議員や候補者は、その影響力を選挙に利用していると受け取られるような依頼を避けなければなりません。
民生委員・児童委員への依頼にも配慮が必要
民生委員は、地域住民の相談に応じ、福祉に関する支援や行政機関への協力などを行っています。
民生委員法第16条では、民生委員がその職務上の地位を、政党または政治的目的のために利用することを禁止しています。
この規定に違反した場合には、解嘱の対象となることがあります。民生委員は児童委員も兼ねているため、一般に「民生委員・児童委員」または「民生児童委員」と呼ばれています。
民生委員には、地域住民との信頼関係があります。また、活動を通じて、住民の家庭事情や生活上の悩みに触れる機会もあります。
その立場や、民生委員には、職務上の地位を政治目的に利用しないことに加え、職務を通じて知った住民の秘密を守る義務があります。
候補者側も、民生委員としての人脈や地域への影響力を期待して、選挙の応援を求めることには慎重であるべきでしょう。
元公務員なら自由に応援を頼めるのか
すでに公務員や教員としての身分を完全に離れている人は、通常、現職者を対象とした政治的行為の制限は受けません。ただし、再任用や非常勤勤務など、現在も公務員の身分がある場合は別です。
元民生委員についても、民生委員としての委嘱が終了している人には、民生委員の職務上の地位を利用するという問題は通常生じません。ただし、守秘義務や個人情報の取扱いには、引き続き注意が必要です。
ただし、「元公務員なら何を頼んでも問題ない」という意味ではありません。
退職後も守秘義務などが問題になる場合があります。また、現在も自治体や学校などと密接な関係がある人については、その立場に応じた配慮が必要です。
何より、元公務員や元教員が持つ人脈や信用を、効率よく票に結びつけるという発想は避けたいものです。
選挙の応援は、肩書や影響力ではなく、候補者の考えや活動に本人が納得したうえで行われることが基本です。
地方議員や候補者が大切にしたいこと
公務員への選挙応援の依頼について、候補者側が法律の境界線だけを探るのはおすすめできません。
大切なのは、応援を頼めるかどうかよりも、依頼によって相手を困らせたり、職務上の立場を危うくしたりしないことです。
特に注意したいのは、次のような考え方です。
- 勤務時間外なら何を頼んでもよい
- 個人的な知り合いなら問題にならない
- 表立って活動しなければ大丈夫
- 本人が承諾すれば候補者側に責任はない
実際の判断は、公務員の種類、勤務先、職種、役職、活動する地域、依頼の内容などによって異なります。
候補者や地方議員が独自に判断せず、少しでも疑問があれば、相手の勤務先の服務担当部署や選挙管理委員会などに事前に確認することが大切です。
公務員への選挙応援の依頼は慎重に
公務員が選挙を応援することは、すべて一律に禁止されているわけではありません。
しかし、公務員の地位を利用した選挙運動は禁止されています。国家公務員、地方公務員、公立学校の教員などでは、それぞれ異なる規定が関係します。
民生委員・児童委員についても、職務上の地位を政治目的に利用することはできません。
地方議員や候補者は、「誰なら応援を頼めるか」だけを考えるのではなく、相手の職務や信用を守ることを優先する必要があります。
法律に触れなければよいという姿勢ではなく、誤解を招かない、公正で節度ある関わり方を心がけたいものです。
「具体的な行為は、所属先の服務担当部署や選挙管理委員会などへ確認してください」という留保を残すのが安全です。
※本記事は、公職選挙法、国家公務員法、地方公務員法、教育公務員特例法、民生委員法などの公表されている法令をもとに、一般的な注意点を記載しています。
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