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当選無効を回避!地方議員の被選挙権|住所要件は住民票だけでは判断できない

 

地方議員選挙では、当選後に「その地域で暮らしていた実態がない」と判断され、当選が無効になることがあります

立候補の届け出が受理され、選挙運動を行い、得票によって当選したとしても、被選挙権を満たしていなければ議員にはなれません。

地方議員を目指す方にとって、住所要件は出馬を考え始めた段階で確認しておきたい重要な問題です。

ただし、「選挙の3か月前までに住民票を移せばよい」と単純に考えることはできません。

この記事では、地方議員に求められる住所要件の基本と、立候補前に注意しておきたい点を見ていきます。

 

筆者/山辺美嗣(やまべみつぐ)について
公共政策コンサルタント


◆山辺の3つの視点◆
①国の行政視点:経済産業省(旧通産省)で培った視点
②国際機関の視点:国連勤務経験を生かした視点
③地方の視点:県議会議員時代の現場重視の視点


山辺は県議時代の2000年に、「地産地消政策」を、全国初で実現した。

地方議員の被選挙権には住所要件がある

被選挙権とは、選挙に立候補して、議員や首長に選ばれる資格のことです。

地方議会議員の被選挙権について、公職選挙法では次のような要件が定められています。

  • 日本国民であること
  • 年齢が満25歳以上であること
  • その地方議会議員選挙の選挙権を有していること

地方議会議員の場合、年齢や国籍だけでなく、「その選挙の選挙権を持っていること」が求められる点が重要です。

地方選挙の選挙権には、一定期間その地域に住所を有していることが必要とされています。そのため、結果として地方議員の被選挙権にも住所要件が課されることになります。

市区町村議員と都道府県議員では範囲が異なる

住所要件の考え方は、市区町村議会議員と都道府県議会議員で少し異なります。

市区町村議会議員選挙では、原則として、その市区町村に引き続き3か月以上住所を有していることが必要です。

たとえば、区議会議員選挙に立候補する場合は、その区の選挙権を有していなければなりません。単に同じ都道府県内に住んでいるだけでは足りません。

一方、都道府県議会議員選挙では、その都道府県内の市区町村に引き続き3か月以上住所を有していることが基本となります。

その後、同じ都道府県内の別の市区町村へ住所を移した場合にも、一定の条件のもとで選挙権が続くことがあります。

市区町村議会議員選挙と都道府県議会議員選挙を、同じ住所要件だと考えないことが大切です。

 

なぜ「3か月以上」が必要なのか

地方選挙で実際に投票するためには、選挙人名簿に登録されている必要があります。

選挙人名簿は、市区町村の選挙管理委員会が作成し、管理しています。

一般的には、満18歳以上の日本国民で、住民票が作成された日や転入届をした日から、引き続き3か月以上その市区町村の住民基本台帳に記録されている人が登録の対象となります。

地方議会議員の被選挙権は、その地方選挙の選挙権と結び付いています。そのため、この「引き続き3か月以上」という期間が、地方議員の立候補資格にも関係してくるのです。

首長選挙には同じ住所要件がない

地方議員と、市長や町長、知事などの首長とでは、被選挙権の要件が異なります。

地方議会議員には、その地方議会議員選挙の選挙権が必要です。

一方、都道府県知事や市区町村長については、その自治体の選挙権を持っていることまでは求められていません。

たとえば、市長選挙に立候補する人が、立候補する市に3か月以上住んでいることは、被選挙権の要件ではありません。

これに対して、市議会議員選挙では、その市の選挙権が必要となるため、住所要件が生じます。

 

住民票を移しただけでは十分とは限らない

住所要件を考えるうえで、特に注意したいのが住民票と実際の居住との関係です。

選挙人名簿への登録には、住民基本台帳の記録が使われます。そのため、住民票は被選挙権を確認するうえで重要な資料です。

しかし、住民票が置かれているという形式だけで、必ず住所要件が認められるわけではありません。

民法第22条では、各人の「生活の本拠」を住所としています。

つまり、実際には別の場所を生活の中心としているにもかかわらず、立候補する地域へ住民票だけを移したような場合には、その地域に住所があるとは認められない可能性があります。

どこが生活の本拠であるかは、住民票だけでなく、生活全体の状況を踏まえて判断されます。

住所要件は、書類上の手続だけではなく、実際にどこで生活しているのかが問われる問題なのです。

居住実態が問題になるのはどのような場合か

住所要件をめぐって当選の効力が争われるのは、住民票の所在地と実際の生活状況が一致していないと疑われる場合です。

過去の事例では、立候補する自治体に住民票が置かれていても、実際には別の場所が生活の中心だったとして、当選が無効になったケースがあります。

こうした判断では、一つの事情だけを見るのではなく、日常生活の状況などを総合して、どこが生活の本拠だったのかが検討されます。

ただし、家族と別居している、仕事のために外泊が多い、複数の住居を利用しているというだけで、直ちに住所要件を満たさないと決まるわけではありません。

生活の形は人によって異なります。

大切なのは、形式だけを整えることではなく、立候補する地域が実際に自分の生活の本拠となっているかを、客観的に考えることです。

 

立候補時には住所要件について宣誓する

地方議会議員選挙に立候補する際には、住所要件を満たす見込みであることを記載した宣誓書を提出します。

これは2020年の公職選挙法改正によって追加されたものです。

虚偽の宣誓を行った場合には、当選の効力だけでなく、刑事罰や公民権停止につながる可能性があります。足立区選挙管理委員会の案内では、虚偽宣誓罪は30万円以下の罰金で、刑が確定した場合は5年間公民権が停止されると説明されています。

住所要件は、当選後に問題になったときだけ考えればよいものではありません。

立候補を届け出る時点で、自ら資格を確認し、宣誓する必要があるのです。

立候補前に確認しておきたいこと

住所要件について不安がある場合は、自己判断のまま準備を進めないことが大切です。

まず、立候補する選挙の種類と、住所を有することが必要な区域を確認しましょう。

市区町村議会議員と都道府県議会議員では、住所要件の範囲が異なります。また、選挙権があることと、実際に選挙人名簿へ登録されていることは、厳密には同じ意味ではありません。実際に投票するには、選挙権に加えて選挙人名簿への登録が必要です。

特に、次のような事情がある方は、早めの確認が必要です。

  • 最近、転入や転居をした
  • 二つ以上の住居を利用している
  • 家族と別の場所で生活している
  • 仕事などで長期間、自宅を離れている
  • 住民票の所在地と日常生活の場所が異なる

これらに当てはまること自体が、直ちに違反を意味するわけではありません。

しかし、個別の事情によって判断が分かれる可能性があります。選挙の日程が迫ってからではなく、出馬を検討し始めた段階で、選挙管理委員会へ相談することをお勧めします。

事情が複雑な場合には、公職選挙法に詳しい弁護士など、専門家への相談も必要でしょう。

 

住所要件をめぐっては制度上の議論もある

地方議会議員には住所要件がある一方、知事や市区町村長には、立候補する自治体に住んでいることは求められていません。

地方議員には地域とのつながりが必要だという考え方がある一方で、幅広い人材が立候補できるよう、制度を見直すべきだという意見もあります。

住所要件のあり方は、今後も議論されるべき課題でしょう。

ただし、制度に疑問があることと、現在の法律を守らなくてよいことは別問題です。

現行制度のもとで地方議員を目指す以上、住所要件を正しく理解し、立候補資格を確認しておかなければなりません。

まとめ

地方議員の被選挙権には、地方選挙の選挙権を通じて住所要件が課されています。

注意したいのは、住民票を移したという事実だけで、必ず要件を満たすとは限らないことです。

法律上の住所は、実際の「生活の本拠」を基に判断されます。

住所要件は、当選無効を避けるための形式的な手続ではありません。その地域で暮らし、地域住民の代表を目指す立場にあるかが問われる制度です。

転居や二拠点生活など、少しでも判断に迷う事情がある場合には、早い段階で選挙管理委員会や専門家に確認してください。

出馬への準備を進める前に、自分が被選挙権を満たしているかを確かめることが、何より大切です。

 


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【①地方議員向けに特化した情報】
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連続6回当選の元県議会議長が、勝ち抜いてきたノウハウを公開しています。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対として培ったノウハウもご紹介します。

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官僚・国連勤務・県議経験者の筆者が、地方議員からは見えにくい「国会議員と地方議員の違い」「他国と日本の違い」をふまえて解説しています。選挙法規等は議員目線で読み解いています。議員活動を支えた妻も、人材育成業の経験を活かし、わかりやすい情報を目指して執筆に加わっています。