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【地方議員選挙】直前3か月のチェックリスト7項目

 

地方議員を目指している立候補予定者は、告示日までにすべき「選挙準備」についてまとめた情報が無いとお困りなのではないでしょうか。多くの立候補予定者が悩む原因はつぎの2点にあります。

世の中の選挙ノウハウは国政選挙向けで地方議員選挙の実情に合っていない
現職の地方議員はノウハウを明かさない

 

この記事は、選挙準備のチェックリスト7項目を全て解説しています。

1.選対役員
2.選挙スタッフ
3.選挙資金
4.選挙事務所
5.選挙カー、備品レンタル、グッズ購入
6.インターネット対策
7.名簿

この記事を読むことで、地方議員ならではの選挙準備の仕方が分かると思います。

ぜひ当選を果たしてください。地元の発展が日本の発展をけん引していくことを願っています。

【筆者/やまべみつぐ】について
【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫5人。

 

 

① 選対役員はいち早く確保したい

冒頭に列挙した選挙準備のチェックリスト7項目は、業務量としても相当ハードです。これをわずかの期間に整えるためには、協力者は欠かせません。

また、この選挙準備を通して選挙の法規にも精通していくので、そののちには選挙対策の中核を担う「選対役員」として活躍する方々の確保につながります。

選対役員に期待される役割を次に解説します。それぞれを一人ずつ担っていくことが望ましいのですが、現実には兼務せざるを得ないこともあるでしょう。

具体的な役職名(代表的な名称であり決まったものではない)を挙げて説明しますので、その役割を担ってもらえる人をいち早く確保してください。既に後援会があれば、後援会役員でどのように役割を分担するか具体的に検討することが可能です。

 

 

総括責任者、幹事長、会計責任者

総括責任者は対外的に候補者に代わって応対する。

選挙本部の代表者であり、マスコミへの対応、有力な支援者への対応などに当たります。文書やお金を含め選挙に関する全てについて最終的な責任を負います。

 

幹事長は候補者を常に支え、スタッフに具体的な指示を出す指揮官である。

演説原稿、スローガンやアピール文の検討、ポスターやビラのデザインと内容、そして選挙戦術も候補者と共に練り上げます。選挙スタッフに指示を出し、外部的には寄付金確保などの渉外活動を担います。

 

会計責任者は選挙の収入、支出の全てを管理する。

選挙管理委員会に選挙資金収支を報告する義務を負い、報告に虚偽の記載をしたときは公職選挙法により厳しい処罰を受けます。

 

 

 

この3役職(名称が異なっていても上記の役割を果たしている場合は同様)は、連座制(※)の対象です。つまり、この3役職者が公職選挙法に違反した場合には候補者の当選は取り消される可能性があり、極めて重要な役職です。なお、連座制については親族(候補者等の父母、配偶者、子又は兄弟姉妹をいいます。候補者等との同居の有無は問いません。)や秘書も対象者となります。

 

(※)連座制: 候補者と一定の関係にある者が買収など悪質な選挙違反で刑が確定した場合、候補者本人が関与していなくても連帯責任を問う制度。当選を無効とし、同一選挙区での立候補を5年間禁止する。選挙運動の総括責任者などは罰金以上、親族や秘書、幹事長など組織的選挙運動管理者は禁錮以上の刑確定で対象となる。公選法は連座制適用に向けて迅速に公判を進めるために、起訴から100日以内に判決を出すよう努めなければならないと定めており、「百日裁判」と呼ばれる。

 

 

 

事務長、選挙カー担当、個人演説会担当、電話作戦担当

事務長は選挙の事務処理を総括する。

選挙管理委員会への立候補届、選挙公報の原稿作成、事務所の賃貸契約、ポスターやビラの印刷契約、コピーFAX機のレンタル契約、事務用品の購入などの業務があります。

 

選挙カー担当は選挙期間中の街宣を担当する。

先ずは、選挙カーを装備を含め外注することから始まり、警察での選挙カー確認、選挙区をくまなく回る順路の作成、候補者や応援弁士と合流しての遊説企画、ウグイスの流し原稿作成と練習、運転手、ウグイスと運動員の弁当手配なども行います。

 

 

 

個人演説会担当は個人演説会を計画し運営する。

個人演説会は夜を中心に、日中のミニ演説会や会社での朝礼挨拶なども組み込んで計画を立て、会場を確保し、看板や垂れ幕などの演説会場用品を保管し運搬する指揮を執ります。

 

電話作戦担当は電話やインターネットでの情報伝達を担当する。

固定電話や携帯電話で、立候補の挨拶、個人演説会の案内などを行うため、スタッフの確保、原稿の作成を行います。インターネットSNSで拡散する情報も作成し、スタッフに拡散を要請します。

 

 

 

② 選挙スタッフは大勢のボランティアで成り立つ

選対役員の指示の下で選挙運動を担う選挙スタッフは、かなりの人数が必要なので、早めにお願いを始める必要があります。

選挙スタッフの一部は例外的に有償で雇うことができる

選挙カーの運転手については公費で日当が支払われます。

選挙カー運転手1名には定額の日当が選挙管理委員会から支給される。

 

運転手以外の運動員については、限定的に選挙事務所から報酬を支払うことができます。
ウグイス、手話通訳者、事務員には上限額内の報酬を支払うことができる。

運転手を除く報酬を支払うことができる運動員の人数は、1日当たり合計9人まで選挙期間合計で45人までです(市議会議員選挙の場合)。

ウグイスはプロの方もいる世界なので、アマチュアの方にも基本的に報酬を支払ってお願いをします。1週間お休みを取って声を出し続けることの出来る人はそんなにいないので、出来るだけ早く確保したいものです。

 

選挙運動員のほとんどはボランティアなので報酬を支払ってはいけない

選対役員を含め選挙運動員は基本的にボランティアであり、報酬を支払うことは禁止されています。選挙運動員に人数の制限はありませんが、街頭遊説の際には、道路交通の安全確保の観点から総人数に制限があります。

職業のある人は休暇を取って参加していただくことになります。なお、ボランティアであっても、18歳未満の未成年者が選挙運動をすると違反になります。

 

電話作戦のスタッフは重要な役割を果たしている。

選挙の投票率を支えている年代が、自宅にいることが多い中高年層なので、引き続き電話作戦は重要です。

選挙期間中に数時間でも協力いただける方にボランティアをお願いして、選挙期間合計の延べ人数では30~60人になる大部隊です。

選挙事務所の一角を仕切ってレンタルの固定電話やレンタルの携帯電話でおこないます。個人の携帯電話で行った場合でも選挙事務所から使用料を支払ってはいけません。

 

 

街頭遊説でのビラ配りや手振り、個人演説会場設営のスタッフは地味だが体力のいる業務。

運動員一人一人の日程を確認して積み上げるので、1日当たり5人の運動員だとしても毎日入れ替われば1週間で35人となります。

自分の選挙に当てはめて人数を計算すると分かりますが、選挙準備ではスタッフの確保がとても重要です。

 

労務者を有償で使用するとき、選挙運動は禁止される

選挙運動に当たらない業務、例えば運搬、組み立てなどの役務について、一定限度額内の報酬で労務者を雇うことができます。なお、労務者費用の総額は、選挙期間になると費用にカウントされ総額規制があります。

注意せねばならないのは、例えば労務者が街頭でのビラ配りをしたとして、「どうぞ」と言って手渡すことは出来ても「〇〇さんをよろしくお願いします」と言うと選挙運動になり、労務者が行うことは公選法違反です。

 

③ 選挙資金は候補者負担が過重にならないよう、役員が寄付金確保に努める

選挙資金の収支を見積もり、必要金額を確保することは選挙準備で極めて重要なことは言うまでもありません。近年は、費用のうち公費負担の対象が拡大してきており、候補者の負担軽減が図られてきています。

しかしながら候補者負担は引き続き大きな金額であるので、選挙準備に当たっては選対役員が寄付金の確保に力を注ぐことが重要です。

選挙費用の公費負担

地方議員選挙では、次の費用が公費で負担されます。

選挙ポスターは選挙区ごとに決められた一定枚数の作成費用が上限金額まで公費で負担される。
選挙はがきは2000枚(市議会議員選挙の場合)までの郵送費が公費で負担される。
選挙ビラは2種類4000枚(市議会議員選挙の場合)までの作成費用が上限金額まで公費で負担される。
選挙運動用自動車の借り入れ代、燃料代、運転手の雇用について限度額の範囲内まで公費で負担される。

 

 

候補者負担

候補者が負担することとなる費目は次のとおりです。

供託金は、県議会60万円、市議会30万円、町村議会15万円。(供託金没収点以上の得票を得ると返金される)
室内掲示ポスターは、選挙ポスターと同じデザインのものを自費制作して、支援者宅の室内や個人演説会場内で使うもの。
選挙はがき2000枚の作成費。

 

 

選挙カー費用のうち、音響レンタル代、車載看板製作費、照明設置費など。
報酬は、ウグイス、手話通訳、事務員など。
事務所費は、借料、事務機器レンタル料、水道光熱費など。
事務雑費は、電話代、ネット回線仕様料、郵送代、茶菓代、労務費など。

 

 

選管に報告する必要はないが実際上発生する費用として、候補者がとその配偶者が家庭を留守にするため、家族の介護費用やベビーシッター費用、食事の宅配費用など。

 

これらの候補者負担費用の合計は、市議会議員選挙の場合低く見積もっても300万円を超えるでしょう。また、選挙に先立って政治活動の費用(後援会リーフレット、討議資料印刷費、討論会など会場費、音響機器、のぼり旗購入費など)も多額が支出されるので、後援会などの政治団体や選対役員が寄付を募ることは大変重要です。

 

 

④ 選挙事務所は立地場所が重要なので、いち早く手配を

選挙事務所の場所

選挙事務所は、候補者を応援する人たちの集合場所です。しかし、候補者や選対役員の都合だけで立地を考えると、結果として応援しようとしている人が行きにくい場所になったりするので注意が必要です。

選挙事務所の大きな看板が遠目にもよく見えて、地盤としている地域の人たちが立ち寄りやすくトイレ環境なども整っている物件を見つけるには、確保に動きだす時期が早くなくてはなりません。

公共交通が必ずしも十分でない地方都市では、事務所から遠くないところに駐車場を確保することも重要です。

 

 

 

選挙事務所の広さ

広さはある程度は欲しいが、決して第1条件ではありません。次の4つを確保できれば十分なので、広さよりも立地を第1条件にして欲しいですね。

来訪者の応対スペース
スタッフの休憩・作業スペース
電話作戦のスペース
常設トイレがないときは仮設トイレを屋外に設置するスペース

 

⑤ 選挙カー手配、事務機器のレンタル、グッズ購入

選挙の必要備品を一括して引受けるサービスもありますが、出来るだけメンテナンスのサービスを迅速に提供してくれる地元の企業に発注することをお薦めします

例えば、

選挙カーの車載看板が強風で破損したときの修理をすぐにするとか、音響機器用のバッテリーを毎晩充電済みのものと交換するには、やはり選挙カーの一式を近所の自動車整備事業者に発注しておく方が良いと思います。
コピーFAX機でも、不調になったときにすぐサービスマンが来てくれないと業務に支障が生じます。

 

 

たすきや白手袋、候補者カラーのお揃いジャンパーなども破損したとき、汚れたときにすぐに変わりが調達できるようにしておきたいですね。

今の時代は何でもすぐにネット調達できると思いがちですが、全国一斉の選挙では供給がそう簡単ではないので、ぜひ地元業者を優先して手配を進めることが大切と思います。

 

 

⑥ インターネット対策を指揮できる若手の役員を確保する

2013年からインターネットを使った選挙運動が出来るようになりました。以下にその使い方を例示しますが、インターネットを駆使できる役員がいるかいないかでは大きく効果が違ってきます。

ぜひ若手の役員を確保してインターネット対策を指揮できるようにしたいものです。

第1に検討したいのは、まったく利用に制限のないSNSで選挙運動をすることです。

ネットワークで一定のグループを参加している個々人にお願いして、スマホやPCから発信してもらうことになるので、協力者が何人いるかが勝負になります。

候補者だけでなく、役員、スタッフ、友人、家族、親族が候補者の選挙運動の様子を発信したり投票呼びかけをすることを基本にして戦略を立てる必要があります。

 

 

第2に候補者のホームページです。

選挙期間中は更新できないけれど、SNSからのリンクで見てもらえるので、是非とも選挙準備期間に充実しておくことを薦めます。

 

第3に電子メールです。

選挙期間中はメールによる選挙運動が候補者本人だけに制限されているので、本人アドレスからの予約発信を使うのが有効でしょう。

⑦ 名簿が必要な理由は、電話作戦と選挙ハガキ宛先、そして次の選挙の土台となるから

現職の議員は、これまでの選挙に使ってきた名簿をそれぞれ持っているものです。

前回1票を投じてくれた有権者には今回も電話でお願いをするし、選挙ハガキも送る。また、前回は反応が良くなかったけれどNOでなければ、今回も電話をしてはがきも出す。こんなふうに名簿を使っているのです。

新人は前回の名簿が無いけれど、選挙準備期間に役員とスタッフの協力で良いものが作れるので早く着手することが大事です。先ずは、選挙区のNTT電話帳、卒業生名簿、同窓生名簿ななど古くても良いので既存の名簿を大勢で集めることが大事です。地域の電話番号簿はネットで見つかることもあります。

 

 

まとめ

7つのチェックリストを丁寧に点検して選挙準備を充実し、万全の選挙態勢を築いて欲しいと思います。

政治活動で票田を耕しながら同時に選挙準備をするには、候補者一人では限界があります。選対役員を確保して、いろいろな協力を得て進めることが何よりも大事です。

早急に役員体制を整備して候補者と共に、7つのチェックリストを一つ一つ点検し、準備を着実に進め、万全の選挙態勢を築いてほしいところです。

各々の事項について 詳しく解説した記事も公開していますので、ぜひ参照してください。

 

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【①地方議員向けに特化した情報】
既存の議員関連情報(マスコミ報道や選挙マニュアル等)は国会議員を想定したものが中心です。地方議員の実情に合った情報をお探しの方におすすめです。

【②議員当事者ならではのノウハウや実情が豊富】
連続6回当選の元県議会議長が、勝ち抜いてきたノウハウを公開しています。保守三つ巴の熾烈な選挙戦や、他の候補者の選対として培ったノウハウもご紹介します。

【③ 地方議員と支援者への応援情報】
官僚・国連勤務・県議経験者の筆者が、地方議員からは見えにくい「国会議員と地方議員の違い」「他国と日本の違い」をふまえて解説しています。選挙法規等は議員目線で読み解いています。議員活動を支えた妻も、人材育成業の経験を活かし、わかりやすい情報を目指して執筆に加わっています。