選挙に出る人を応援したい。
そんなとき、誰にでも手軽にできる応援の一つは、選挙事務所への「差し入れ」でしょう。
しかし「差し入れ」が選挙違反にならないかどうか、心配な方は少なくありません。
なぜなら選挙法規には、どう読み解いてよいのか、迷うようような表現が多数あるからです。
この記事でわかる事
- 選挙違反にならない「差し入れ」について
- 【筆者やまべみつぐ/編集やまべちかこ】について
- 【やまべみつぐ(山辺美嗣)】
通産官僚、国連(ジュネーブ)、独法(ニューヨーク)での勤務を経て、県議に。日本初の地産地消政策や、地方議員としてロシアとの直接交渉などを実現しました。その後、県議会議長に就任。保守三つ巴の熾烈な選挙戦を経験し、他の候補者の選対としても活動しました。現在、政治行政のコンサルタント。【やまべちかこ(山辺千賀子)】
元人材育成コンサルタント。産業カウンセラー・ローカル局ニュースキャスター・ナレーター(恩師|お茶の水博士・ベルクカッツェ)・女性組織創設運営など、仕事の経験と、議員の妻としての立場、認知症や身障等の家族(計5人)との暮らしなどで経験した暮らしのノウハウ等もお伝えしています。議員引退を機に、故郷の雪国から子や孫のいる関東に転居。孫4人。
結論!「差し入れ」について
まず結論です。
2.お金は「選挙に役だてるため」の寄付金として一人年間150万円まで、差し入れできる
3.菓子類など物品の差し入れは選挙に限らず、お金との合計で一人年間150万円まで、差し入れできる
※ この記事は、【個人的】に【候補者個人】を応援することを前提にしています。団体や会社が応援するときは別のルールです。
「差し入れ」に関して、法律を総合的に読み解いた意味
時々、「選挙前は候補者にお金の寄付はできない」と考えている人をみかけますが、正しくは、次の通りです。
つまり、
選挙前であっても、選挙中でも、候補者に対して、選挙に役立ててもらうためにお金を寄付できる。候補者に対して、菓子類など物品の寄付は禁止されない。
差し入れをむやみに恐れる必要はまったくありません。
公職選挙法の読み解き方
政治資金規正法の読み解き方
政治資金規正法の該当箇所を見てみましょう。
数字がついている赤字の箇所に注目してください。
とても複雑な書き方になっているので、分解して説明していきます。
何人も、①公職の候補者の②政治活動(選挙運動を除く。)に③関して ④寄附(金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしてはならない。
分解して説明
公職とは選挙で選ばれる議員や首長のことです。候補者とは、立候補を予定している人または立候補した人のことであり、立候補予定者でも候補者と呼ばれます。
では、いつから候補者になるのか?
具体的には、立候補表明や記者会見をした以降、事務所開きをした以降など、選挙に向けて準備をしていれば候補者の扱いになります。
政治活動と選挙運動は、別のものですよと言っています。
具体的には、政治活動に関しては寄付していけないけれど、選挙運動に関しては寄付してもよいと言っているのです。
「関連して」と解釈します。つまり、選挙運動に関連して、というふうに解釈します。
具体的には「選挙のために」「選挙に役立ててもらうために」と理解してください。
金銭等とは、現金、株式、有価証券、商品券などのことです。なお、政治団体とは選挙管理員会に届けた政党、後援会、資金管理団体などのことですが、この解説では直接関係ありません。
意味するところは、政治活動に関して候補者への金銭等の寄付は禁止だけど、選挙運動に関しては候補者への金銭等の寄付はしてよいと言っています。
また、金銭等によらない物品の寄付について触れていないので、物品の寄付は禁止していません。
公職選挙法の読み解き方
公職選挙法の該当箇所もみていきましょう。
数字がついている赤字の箇所に注目してください。
この法律もなかなか難解なので、分解して説明しています。
何人も、①選挙運動に関し、いかなる名義をもつてするを問わず、②飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供することができない。
分解して説明
判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています(総務省の解説より)。
すごい表現ですね。一読ではまずなんのことか分かりません。
要するに「有権者から票を得ようとする行為」が選挙運動です。
候補者を応援するために菓子類を差し入れる行為は、有権者に働きかける行為ではないので選挙運動ではありません。
候補者に物品を寄付する行為なので、一人年間150万円までできます。
②飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供することが出来ないの意味
候補者であれ誰であれ、飲食物を有権者に提供することは出来ません。食事に相当するもの(弁当などを含む)は、選挙事務所で働く運動員以外には提供することが禁止されます。
ただし「茶菓」については「通常のもの」は提供できます。
なお、選挙事務所で来訪者などに提供できる菓子類は、通常用いられる程度である「一人前500円」未満にとどめることが一般的です。
正しくは、
数量も常識で妥当と思われる程度にしましょう。
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「差し入れ」についてのまとめ
難しい選挙法規をできるだけ実際に照らして説明してみました。
改めてまとめてみましょう。
- ① 選挙準備を始めた候補者に対して、選挙前も選挙中も「選挙に役だてる」ための寄付金を差し入れることが出来る。
② 候補者に対して、菓子類など物品を寄付することは、選挙のときに限らずいつでもできる。
③ お金の寄付と物品の寄付の合計は、一人年間150万円までできる。
④ 菓子類は、一人前単価が500円未満のもので、常識的な数量を差し入れるのが一般的である。
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